山口県議会議員国本たくや

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山口県議会議員国本たくや
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1 基盤整備を活かした県産米の生産振興について

 田布施町、柳井市、光市を対象地域とする南周防農地整備事業は、令和9年の整備完了に向け、順調に進められている。   
 一方で、少子高齢化や人手不足が深刻化していることに加え、退職年齢の延長によって、今後は、地域の中だけでの世代交代を前提とした経営の継承や規模の拡大は難しくなってくる。
 食料安全保障の重要性が叫ばれる時代だからこそ、米作りに意欲を示す企業があれば、県として、その取組を積極的にサポートすべきと考える。
 こうした中、国は、人口減少やコメ消費量の減少などから、水田を畑に転換していく施策を進めており、本県における米の生産面積も年々縮小している状況にある。
しかし、米を販売・加工される実需者からは県産米を求める声が多いことや、水田が農村地域の景観形成等の多面的機能の維持に寄与していることなどを考えれば、水稲を中心とした水田農業を守っていく必要があると考える。
長年にわたり水田の基盤整備が着実に行われてきた歴史も踏まえ、山口県として独自に米の生産振興に特化した取組を進めていく必要があると考えるが、今後どのように取り組まれるのか伺う。

答弁 知事
 国本議員の御質問のうち、私からは「基盤整備を活かした県産米の生産振興」についてのお尋ねにお答えします。
我が国の気候風土に適した米は、日本人の主食として私たちの食生活に欠かすことのできない品目であり、これを将来にわたって安定的に供給していくことが大変重要であると認識しています。
このため、これまで、水稲の生産振興に向けて、水田の大区画化のための基盤整備や集落営農法人等への農地集積を進めるとともに、収穫前での出荷契約による安定した取引の推進や、品質・収量の確保に向けた技術支援などの取組を行ってきたところです。
 しかしながら、近年、担い手の減少や高齢化が進行し、水稲の生産面積が急激に減少していることから、私は、食料安全保障の観点からも、将来にわたって、米の安定的な供給を図るため、農地の約8割を占める水田を有効活用し、水稲の作付拡大に積極的に取り組むこととしています。
 具体的には、まず、効率的な生産に向けて、引き続き、農地の基盤整備や、農地中間管理機構等との連携による担い手への農地集積を進めるとともに、遠隔操作による水管理システムなど、収益性向上と省力化を両立できるスマート農業の導入を支援してまいります。
 また、日本酒の原料である加工用米や飲食店等で利用される業務用米などは、更なる需要拡大が期待できることから、来年度予算において、新たに、その生産に積極的に取り組む経営体に対し、必要となる経費の一部を助成することにより、一層の水稲の作付拡大に繋げることとしています。
 さらに、水稲生産に意欲的な企業の参入を一層促進するため、参入企業に対し、生産に係る技術的な指導を行うとともに、農業機械・施設の導入に要する経費の助成や人材確保のための雇用給付金の支給など様々な支援を行ってまいります。
 加えて、地球温暖化が進む中、高温が続く気象条件下でも安定した品質や収量が確保できる米の品種の導入にも取り組むこととしています。
 私は、JA等の関係団体と緊密に連携しながら、将来にわたって県産米を安定的に供給していくことができるよう、水稲の作付拡大による米の生産振興に積極的に取り組んでまいります。
 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

2 医療関連分野におけるイノベーション創出について

我が国が、医療・健康分野で世界をリードし続けるためには、高い付加価値を生み出すイノベーションを継続的に創出することが重要である。
国の「統合イノベーション戦略2023」において、医療分野も推進すべき重要分野として、中長期的視点で支援していくとされており、県においても、こうした国の動きと軌を一にしながら、企業、大学、医療機関、産業支援機関等が連携したネットワークを通じた新たな研究開発、内発展開の促進に精力的に取り組まれている。
昨年6月、宇部市において、再生医療と最先端リハビリテーションを組み合わせた新たなプロジェクトが始動した。これは、企業や大学、医療機関が一体となって取り組むプロジェクトであるが、産業としての実力を発揮できる医療関連の要素技術や先進科学技術は、県内の企業や大学にまだあるのではないかと考える。
県においては、本県の特性や強みを生かした独自性・優位性のある持続的なイノベーションが創出され、県内でしっかりと実用化・産業化されるよう各機関との連携により、取組のさらなる拡大を図っていただきたい。
そこで、医療関連分野におけるイノベーション創出に、これまでの成果も踏まえ、今後どのように取り組むのか、所見を伺う。
 

答弁 部長
 医療関連分野におけるイノベーション創出についてのお尋ねにお答えします。
 本県は、国内大手の製薬・医療機器メーカーの集積や、山口大学等の優れた研究シーズなど、大きな成長ポテンシャルを有しています。
 このため、県では、医療関連産業を重点成長分野に位置付け、産業技術センターに設置したイノベーション推進センターを核に、産学公連携によるイノベーションの創出に取り組んでいます。
 これまでの取組により、事業化のハードルが高い医療関連分野において、約90の研究開発グループが形成され、40件を超える事業化が実現するなど、着実に成果が上がっています。
 こうした取組を通じ、昨年10月には、山口大学に、革新的な細胞デザイン技術を核とする新たな研究所が設置され、今後、最先端のがん免疫細胞療法をはじめ、再生医療等の研究開発が加速化していくものと期待しています。
 また、山口大学が有する高品質に培養した細胞を治療に用いる再生医療技術と県内企業の最先端のロボット技術によるリハビリテーションを連携させるプロジェクトも開始されたところです。
 県では、こうした新たなプロジェクトの事業化を促進するため、イノベーション推進センターの支援機能を強化し、国等の競争的資金の獲得に向けた事業計画の策定やブラッシュアップ、ネットワークの強化等に取り組んでまいります。
 また、急速な市場拡大が見込まれる再生医療、細胞治療、遺伝子治療等の分野での実用化・産業化を強力に促進するため、新たな補助制度を創設し、革新的なプロジェクトを重点的に支援することとしています。
 さらに、今後とも、先進的な取組を持続的に生み出していくため、イノベーション加速化補助金を活用し、新たな産学公連携プロジェクトの組成にも取り組んでまいります。
 県としては、本県経済の活性化と医療・健康サービスの向上につながるよう、本県の特性や強みを生かしながら、医療関連分野における持続的なイノベーション創出に積極的に取り組んでまいります。

3 観光振興について
(1)隠れた観光資源の発掘について

 先日、ニューヨーク・タイムズ紙の「2024年に行くべき52か所」に山口市が選ばれたが、私は選ばれた理由に、今後の山口県観光の鍵、山口県に住む私たちが気づかない価値、外部からの来訪者の心に刺さる魅力が隠れているのではないかと考えている。
 旅の価値は、単純に観光地の知名度や観光客数で決まるものではないということで、本県には至る所に観光的な魅力や価値が隠れているのではないか。
 今回の報道により、世界中の視線が山口市に注がれている今こそ、その効果を県内の隅々まで波及させていく、これまで埋もれてきた本県ならではの宝や価値を見つけ出し、全世界に認知してもらう絶好のチャンスである。
 そこで、県は、地域の隠れた観光資源の発掘に、今後どのように取り組み、それをどのように世界に発信していかれるのか、伺う。

答弁 部長
 観光振興についての3点のお尋ねにお答えします。
 まず、隠れた観光資源の発掘についてです。
 県では、観光キャッチフレーズ「おいでませ ふくの国、山口」の下、本県の強みである豊かな自然や歴史、多彩な食などの観光資源を最大限に活用しながら、幸福感あふれる山口の旅を強力にアピールし、誘客の拡大を図ることとしています。
 こうした中、ニューヨーク・タイムズの記事を契機として、本県への注目が高まっており、県ではこの好機を活かし、観光客の心を掴む、地域の隠れた観光資源の発掘と、世界に向けた情報発信に積極的に取り組むこととしています。
 まず、観光資源の発掘については、地元の情報に精通した方から、地域に根差した祭りなどの伝統文化のほか、古刹や郷土料理など、観光客には知られていない地域ならではの魅力ある観光資源を収集していきます。
ま た、お示しのように、山口県に住む人では気づかない外部の視点も重要であることから、新たに、旅行者や県内留学生などが魅力に感じた、日常の暮らしや風景、グルメなどの情報を募る取組を実施し、隠れた観光資源を掘り起こしていきます。
 さらに、世界に向けた情報発信については、発掘した観光資源をインスタグラムなどのSNSで発信するとともに、海外メディアやインフルエンサーを招いた視察ツアーで紹介するなど、誘客の新たな起爆剤として光を当て、本県の認知度向上を図っていきます。
 県としては、今後とも、市町や関係団体等と連携し、地域の隠れた観光資源の発掘を図るとともに、世界に向けた情報発信に積極的に取り組んでまいります。

(2)観光地の受入環境の整備について

 来訪者に対するおもてなし、観光地の受入環境の整備は喫緊の課題であり、再訪問のポイントとなるのが「きれいなトイレの整備」である。
 観光地の受入環境整備には多大なコストと労力を要するため、多言語化や公衆無線LAN等の整備が優先され、トイレは、施設管理者である市町や民間事業者任せとなりがちである。
 ニューヨーク・タイムズ効果により、今後、国内外の観光客数の増大が期待される中、観光客の定着化とさらなる拡大につなげていくためには、これまで対策が行き届いていなかった箇所も改善し、ストレスなく滞在できる環境を整備していくことが重要である。
 県は、きれいなトイレの整備をはじめとした観光地の受入環境整備に、今後どのように取り組むのか所見を伺う。

答弁 部長
 次に、観光地の受入環境の整備についてです。
 本県を訪れる国内外の旅行者にストレスなく快適な観光を楽しんでいただくためには、観光地の受入環境の整備が必要であり、とりわけ、お示しの「きれいなトイレの整備」は重要です。
 このため、県では、まず、観光の滞在拠点となる旅館やホテルにおいて、施設の高付加価値化が図られるよう、高機能トイレの導入等の支援を行ってきたところです。
また、これまで自然公園や道の駅の駐車場に設置されたトイレの改修を、国の支援制度を活用しながら順次進めてきたところであり、今後も市町や関係団体等と連携しながら、計画的な整備に取り組んでいきます。
 さらに、トイレの設置を含め、観光案内の多言語表示など、観光地全体が一体的に取り組む受入環境の整備を積極的に支援し、旅行者の満足度を高めていきます。
 県としては、観光客の定着化や更なる誘客拡大に向け、今後とも、市町や関係団体等と連携しながら、「きれいなトイレの整備」をはじめ、観光地の受入環境整備に積極的に取り組んでまいります。

(3)広域周遊観光の推進について

 観光振興の実効性を高めるためには、世界的に認知度の高い観光資源とタッグを組んでいくことも欠かせない。
 2025年には大阪・関西万博、瀬戸内国際芸術祭など強力なイベントが控えている。関西にはエンターテインメント等の都会的な魅力や、瀬戸内地域には、独自の景観や自然、アートなどの魅力があり、東京や富士山、京都にも負けない、新たなゴールデンルートとなるポテンシャルを秘めている。その一角に山口県は位置し、原爆ドームや宮島・厳島神社からは、岩国市はもちろん、周防大島や熊毛郡の観光地へも簡単に足を延ばすことができる。
 この地理的なメリットを生かし、県を跨いだ広域周遊観光を促していくことは、県東部地域の観光の活性化につながるだけでなく、ゴールデンルートで観光する外国人観光客に新たな観光コンテンツを提供することにもつながる。
 ニューヨークタイムズ紙の発表をきっかけに、本県観光への関心や期待が高まっているこの機を逃すことなく、広域周遊観光を推進していくべきと考えるが、今後どのように取り組まれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 次に、広域周遊観光の推進についてです。
 お示しのとおり、大阪・関西万博などの国際的な大規模イベントを控える中、関西や瀬戸内地域は、都会的なエンターテインメントや、独自の自然・景観、アートなどの多彩な魅力を有しており、県では、これらと地理的に近いメリットを活かし、広域周遊観光の推進に取り組むこととしています。
 具体的には、JR西日本や市町と連携し、新幹線・電車等が乗り放題となる周遊パスと、魅力ある観光コンテンツを組み合わせた広域旅行商品を海外の旅行予約サイトに掲載し、関西方面からの周遊を促進していきます。
 また、世界的に認知度が高く、多くの外国人観光客が訪れている広島県の宮島を起点とし、錦帯橋や柳井の白壁の町並みなどを巡る新たな観光周遊バスを運行することにより、県外からの誘客を促進し、県東部地域の観光の活性化を図っていきます。
 さらに、瀬戸内7県が参画する「せとうちDMO」と連携し、万博を見据えた新たな観光資源の発掘や、食や自然体験などテーマ性のある広域周遊ルートのブラッシュアップを進め、瀬戸内の魅力を活かした誘客拡大に取り組んでいきます。
 県としては、本県への注目が高まっているこの好機を活かし、今後とも、市町や関係団体等と緊密に連携しながら、広域周遊観光の推進に積極的に取り組んでまいります。

4 災害等に即応できる技術系職員の体制強化について 

 人口減少と少子化により、全国的に地方公務員のなり手不足が深刻な問題となっており、とりわけ、土木の技術職員は人材確保が非常に難しくなっている。
 土木をはじめとする技術職員は、社会資本の整備や災害への対応など、暮らしに直結する重要な仕事に携わっているが、職員不足の状況が続けば、公共サービスの提供さえ容易ではない状況となることが懸念される。
 こうした厳しい状況を踏まえ、県では、技術職員の人材確保のため、土木建築の魅力発信など、戦略的な広報にも力を入れている。
 また、働き方改革を進めるため、業務の効率化やデジタル技術の活用など、職員が活躍できる環境整備にも取り組んでいる。
 しかしながら、将来にわたり、質の高いインフラを持続的に整備・維持していくためには、土木職員全体の組織体制を強化していく取組を、これまで以上にスピード感と危機感を持って、重点的に進めていくべきと考える。
 例えば、多様な働き方を受け入れ、職員一人一人がやりがいや成長実感を得られ、満たされるような労働環境を整えることが重要だと考える。
 県は、県民の暮らしや経済活動を将来にわたって安心・安全に支えていくため、それを担う土木職員の人材確保や働き方改革など組織体制の強化に、今後どのように取り組まれるのか、ご所見を伺う。

答弁 部長
 災害等に即応できる技術系職員の体制強化についてのお尋ねにお答えします。
 近年、人口減少や少子化等により、自治体の土木職を希望する若者が減少傾向にある中、防災・減災対策や社会インフラの整備などの取組を着実に推進するため、本県の土木職員の確保や働き方改革などによる組織体制の強化は重要な課題であると考えています。
 このため、県では、まず、土木職員の確保に向け、県内外の大学や県内の工業高校等へのリクルート活動を強化するとともに、土木の仕事の魅力を幅広く発信するため、SNSの活用や、小学生とその保護者を対象とした現場見学会などを行っています。
 加えて、採用試験についても、早期の実施や内容の見直し等、土木職を志す方が応募しやすい制度としており、今年度の申込者数については、昨年度に比べ倍増するなど、着実に成果が出てきているところです。
 次に、職員の働き方改革については、一人ひとりが主体的かつ意欲的に実践できるよう、若手職員等から直接意見を聴き、提案を取り入れながら進めることにより、仕事にやりがいを持ち、活き活きと働くことのできる職場環境の整備に取り組んでいます。
 体的には、迅速な情報共有を可能とするチャットツール、業務プロセスを自動化するRPA、工事現場等への移動時間を削減する遠隔臨場等のデジタル技術を積極的に活用しており、今後もこうした取組を深化させ、業務の更なる効率化を図っていく考えです。
 また、出先事務所等のサテライトオフィスや在宅勤務、時差出勤等の活用により、職員それぞれのライフスタイルに合わせた多様な働き方も推奨しています。
さらに、若手職員と幹部職員による座談会を開催するなど、職員誰もが自由闊達に意見を言え、相談もできる、風通しの良い職場づくりにも取り組んでいるところです。
 県としては、県民の暮らしや経済活動を将来にわたって安心・安全に支えていくため、危機感を持って、こうした取組の不断の検証や見直し等を行いながら、土木職員の確保と、職場における働き方改革を積極的に進め、組織体制の強化を図ってまいります。

1 水田農業の維持・発展について

 令和4年の山口県の水田率は約84%で、全国で7番目に高く、中国・四国・九州地域では、最も高い割合である。
 しかし、農家の高齢化が進む中、農地の管理や維持が困難となる地域が増え、基盤整備された水田でさえも、数年後には耕作する人がいなくなるという切実な声を聞いている。
 農村地域の高齢化が進む中で、水田農業を維持・発展させていくためには、担い手の概念を広く捉える必要もあるのではないかと感じている。
 私はこれまで、農業への企業参入の重要性を訴えてきたが、農業分野への企業参入事例の多くは、収益性の高い園芸品目で、米を主体とした水田農業はそれほど多くないのが実態である。
 私は、食料安全保障の重要性が叫ばれている今だからこそ、自ら米づくりに取り組みたいという企業が増える可能性も十分あると感じており、こうした企業が円滑に水田農業に参画できるよう、県が積極的に関わることが重要だと考えている。
 本県の水田農業を維持・発展させていくため、企業による参入の促進に、今後どのように取り組まれるのか伺う。

答弁 知事
 国本議員からの御質問のうち、私からは、水田農業の維持・発展についてのお尋ねにお答えします。
 担い手の減少や高齢化が進行する中、将来にわたって本県農業を持続的に発展させていくためには、新規就業者の確保や中核経営体の育成等に加え、企業など他業種からの農業参入を促進していくことが重要です。
 このため、これまで、企業の農業参入に向けた手引きの作成や企業への雇用給付金の支給など、様々な支援を行ってきたところであり、この結果、160社を超える企業が本県農業の新たな担い手として参入されたところです。
 私は、持続可能で力強い農業の推進に向けては、こうした多様な担い手の確保が重要であり、とりわけ水田を活用した農業が太宗を占める本県においては、その分野への企業参入をより一層促進していく必要があると認識しています。
 このため、まず、水田農業への企業の参入が円滑に進められるよう、生産者と参入する企業が、地域の営農方針等について直接話し合う場を設定し、企業参入に伴う将来の農地利用や担い手の役割を明確化した計画の策定を支援することとしています。
 また、参入企業に新たに経営を譲渡する場合においては、農業経営・就農支援センターの専門家を派遣することにより、新たな担い手となる参入企業に対する農地や機械等の経営資産の円滑な継承を促進します。
 さらに、参入企業の人材が即戦力として活躍できるよう、農業大学校において、社会人を対象にした研修を実施することにより、基本的な作物栽培技術やスマート農機の操作技術の習得に加え、大型トラクターの資格取得の促進を図ります。
 こうした取組に加え、参入企業が、経営の低コスト化や効率化を図ることができるよう、デジタル技術を活用したドローンなどのスマート農業機械や「ほ場管理システム」の導入を支援することとしています。
 私は、今後とも、市町やJA等の関係団体と緊密に連携しながら、本県の水田農業が将来にわたって維持・発展できるよう、農業経営に意欲のある企業の参入に積極的に取り組んでまいります。
 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

2 公共土木施設の維持管理等の高度化・効率化について

 公共土木施設の老朽化が急速に進む状況を踏まえれば、維持管理に必要な技術者や技能者の育成、現場の生産性向上、新技術の導入など、解決すべき課題が多い中、今以上に維持管理等の高度化・効率化の取組を加速していく必要がある。
 このため、橋梁など、あらゆる施設において、デジタル技術等を積極的に活用するとともに、より効果的・効率的な維持管理等が行えるよう、点検や建設時のデータ等を一元管理し、利活用するシステムを早急に構築するなどにより、補修・修繕等を計画的に進めていく必要がある。
 また、こうして保有したデータを2次利用が可能なオープンデータとして積極的に公開し、大学等の研究機関や民間企業等が行う新技術や新工法等の開発を促進するべきである。
 さらに、行政においては、今後の維持管理データが増加することなどを踏まえ、公共土木施設のデータ一元化と併せて、ペーパーレス化や電子化を推進していく必要がある。
 そこで、公共土木施設の維持管理等の高度化・効率化に今後どのように取り組むのか伺う。

答弁 部長
 公共土木施設の維持管理等の高度化・効率化についてのお尋ねにお答えします。
 高度経済成長期に集中的に整備した道路や河川等の公共土木施設は、老朽化が進み、今後一斉に更新時期を迎えることから、デジタル技術を積極的に活用し、より効率的に維持管理を実施していく必要があります。
 このため、県では、AIやドローンを活用した点検・診断システムについて、既に導入している小規模橋梁に加え、今年度から、標識等の道路付属物をはじめとした、その他の施設にも対象を拡げていくこととしています。
 また、維持管理の更なる効率化を図るため、施設の構造や位置情報、過去の点検や補修の内容等を一元的に管理するシステムを構築することとしており、現在、紙媒体の施設台帳等の電子化と併せて、システムの基本設計を進めているところです。
 このシステムを活用することにより、現場でリアルタイムに補修履歴を確認しながら点検を行うことができ、異状箇所の早期発見、早期対応が可能となるほか、蓄積されたデータを活用し、点検・診断精度の向上を図ることで、維持管理の高度化にもつなげてまいります。
 併せて、こうした取組を行うことにより、行政等におけるペーパーレス化にもつなげていく考えです。
 さらに、既に公開している地質等のデータに加え、今後、蓄積されていく橋梁の補修履歴等のデータを可能な限りオープン化することで、大学等の研究機関や民間企業が行う維持管理等に係る新技術・新工法の開発などの取組を促進していきます。
 県としては、今後とも、将来にわたり公共土木施設の機能を維持し、県民の安心・安全を確保するため、デジタル技術を積極的に活用し、維持管理等の高度化・効率化に取り組んでまいります。

3 中小企業のイノベーション創出について

 中小企業がこれまでの事業を安定して継続していくことが難しくなっている中、稼ぐ力を強化し、成長につなげていく上で、イノベーションの創出は有力な手法であり、積極的に支援する必要がある。
 県では、産業技術センターに設置した「イノベーション推進センター」を中心とした支援を実施しており、昨年度は、田布施町の中小企業が、国の競争的資金「Go-Tech(ゴーテック)事業」に採択された。
 中小企業にとって、国の競争的資金の獲得は、大いにモチベーションが高まるものであるが、充実した県の助成制度もあってか、中国5県の中でも申請件数が低調に推移していると聞いている。意欲ある中小企業のイノベーション創出を後押しするためにも、国の競争的資金獲得に向けた支援体制を強化していく必要があると考える。
 また、マーケティングの視点に立った人材による支援も重要であり、今月、国の中小企業のイノベーションの在り方に関する有識者検討会で示された中間報告では、やまぐち産業振興財団職員の事例が取り上げられた。こうした人財を最大限活かして、支援機関同士が十分に連携し、イノベーション活動に発展させていただきたい。
そこで、急速な人口減少、デジタル化の進展をはじめとする産業構造の転換期において、本県の地域経済を支える意欲ある中小企業のイノベーション創出に、今後どのように取り組むのか、所見を伺う。

答弁 部長
 中小企業のイノベーション創出についてのお尋ねにお答えします。
原材料価格の高騰や脱炭素化への対応など、中小企業を取り巻く環境が厳しさを増す中、本県経済の持続的な発展を図るためには、産学公連携によるイノベーション創出の取組を強化し、県内中小企業の稼ぐ力を伸ばすことが必要です。
 このため、産業技術センターに設置したイノベーション推進センターを核に、企業ニーズと大学の研究シーズとのマッチング等のコーディネート活動を展開し、優れた研究開発テーマの発掘に取り組んでいます。
また、研究開発の実施に当たっては、研究開発のステージに応じ柔軟に対応可能な本県の補助制度や、国の競争的資金を活用しながら、企業の主体的な取組を支援しています。
 こうした取組を通じ、高品質な乾燥食品を生産する高性能乾燥機の研究開発や、お示しのGo-Tech事業に採択された優れた光学技術を基盤としたプロジェクト等が着実に進められています。
 また、これらの成果を事業化し企業の稼ぐ力を強化するため、マーケティングの専門的な知見等を有する産業振興財団と連携し、県外企業とのマッチングや首都圏の展示会等への出展など、販路開拓に取り組んでいます。
こうした中、脱炭素化やデジタル化の進展など、産業構造の転換期においても企業の持続的な成長を図るためには、産業支援機能の強化が必要であることから、本年3月、県の立ち会いの下、産業技術センター、産業振興財団及び山口大学との間で連携協定が締結されたところです。
 これを契機に、関係機関が緊密に連携し、研究開発テーマの発掘から研究開発、事業化までの企業の取組を一体的に支援することにより、県内中小企業のイノベーション創出を加速し、稼ぐ力の強化につなげてまいります。
 県としては、産学公連携を更に強化し、地域経済を支える県内中小企業によるイノベーションの創出に積極的に取り組んでまいります。

4 家畜伝染病の防疫対策の強化について

 昨年度から今年度にかけ、全国各地で高病原性鳥インフルエンザが過去にないペースで発生し、お隣りの広島県で6事例、福岡県で4事例発生するなど、緊張感を強いられる状況が続いたが、畜産農家の皆さんによる防疫対策の徹底や県、市町、関係団体等の連携した対応により、発生を防ぐことができ、私自身安堵したところである。
 他県の事例になるが、昨シーズン、同一地域内で断続的に発生したケースでは、資機材の不足や作業に当たる県職員等の疲弊に加え、殺処分埋却地からの悪臭に伴う地域住民の不安など、多くの課題が明らかとなった。
 さらに、家畜伝染病は、豚熱や牛や豚などの感染症である口蹄疫など様々であり、こうした大型の家畜に発生した場合には、その対応がさらに困難を増すとも言われている。
 家畜伝染病の防疫対策を確実に進めるためには、予防対策はもちろんのこと、最悪の事態を想定した資機材や人員を確保した上で、どのようなケースにも対応できる体制を整えておくことが、畜産農家だけでなく、地域住民の安心につながると考える。
 畜産農家が今後も安心して経営に取り組むことが出来るよう、県では、防疫対策の強化、特に発生後の封じ込め対策にどのように取り組むのか所見を伺う。

答弁 部長
 家畜伝染病の防疫対策の強化についてのお尋ねにお答えします。
 昨年来の全国的な高病原性鳥インフルエンザの発生は、過去最多の件数を記録するとともに、豚熱についても、野生いのししの感染確認地域が拡大し、本県での発生リスクも高まったところです。
 このため、県では、他県での発生後直ちに庁内連絡会議を開催し、養鶏場への消石灰の緊急配布や消毒の指示、さらに、飼養豚へのワクチン接種などを行ったところであり、その結果、現時点で、農場における家畜伝染病の発生を防止できているところです。
 家畜伝染病は、一旦発生すると、畜産経営に甚大な影響を及ぼすことから、県としては、確実な防疫措置に向け、予防対策はもとより、発生後の封じ込め対策に徹底して取り組むことが重要と考えています。
 このため、まず、予防対策として、農場の衛生管理の改善に向けた巡回指導を徹底するとともに、定期的な家畜のウイルス検査等を通じたモニタリングを行い、日常的な衛生管理レベルの向上を図ります。
 また、国内で家畜伝染病が発生した場合は、県内各農場に対し、速やかにその詳細な情報を提供し、注意喚起するとともに、特に隣県で発生した場合には、緊急消毒の指示や立入検査など、適切な予防対策を行ってまいります。
 次に、封じ込め対策に向けては、予め、殺処分時の防疫作業に係る関係者の役割分担を確認・徹底するとともに、より実践的な埋却作業のシミュレーションを実施し、発生後の迅速な防疫対策に繋げてまいります。
 また、本県での充分な量の防疫資材の備蓄や人員体制を確保するとともに、複数農場での同時発生や防疫作業の長期化が生じた場合には、国や中国各県と連携した協力体制を構築することとしています。
 さらに、国に対しては、政府要望や全国知事会等、あらゆる機会を通じて、防疫対策に必要な財政措置や、国における防疫資材の更なる備蓄、国からの人員派遣など一層の防疫体制の強化について要望することとしています。
 県としては、今後とも、国や市町、関係団体等と緊密に連携し、畜産農家が安心して経営が継続できるよう、家畜伝染病の防疫対策の強化にしっかりと取り組んでまいります。

5 地域公共交通の担い手確保について

 地域公共交通は、通勤や通学、通院、買い物など、マイカーを利用できない方にとって、日常生活に欠かすことができない公共インフラであるが、もはや民間事業者単独で維持することが困難な状況である。
 また、その担い手となる運転士は、労働時間が長く、年間所得が低いことから、若者が就業を敬遠する傾向にあり、高齢化と人手不足が大きな課題となっている。
 こうした中、国は、働き方改革の一環として、運転士の長時間労働を改善するため、労働時間等の改善基準告示を見直し、来年4月から適用する。
 これにより、運転士の労務環境の改善が期待されることから、地方自治体としても、賃金引上げ等の処遇改善や更なる確保に積極的に取り組み、持続可能な地域公共交通の構築に道筋をつけなければならない。
 地域公共交通は、市町の枠組みにとらわれず、バスやタクシー、鉄道等がネットワークを形成し、地域住民の日々の移動を支えており、広域自治体である県に対する市町の期待は非常に大きい。
 そこで、県は、地域公共交通の担い手確保に、今後、どのように取り組まれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 地域公共交通の担い手確保についてのお尋ねにお答えします。
 バスやタクシーなど、地域住民の日常生活に欠かせない重要な基盤である地域公共交通を将来にわたって維持していくためには、お示しのように、その担い手となる運転士の確保が重要であり、県では、関係団体と連携しながら、その確保対策に取り組んでいるところです。
 具体的には、山口県バス協会と連携し、大型二種免許の取得費用の助成を行うとともに、交通事業者と求職者との出会いの場を提供する「就職相談会」や「運転士体験会」を開催するなど、公共交通で働くことの魅力ややりがいを感じてもらう取組を実施しているところです。
 こうした中、運転士の長時間労働等の改善を図るため、労働時間等の基準が見直され、来年4月から適用されることから、県としても、これを契機に、運転士の労務環境の改善が進むよう、取り組んでいく必要があると考えています。
 このため、労働時間の短縮にもつながる取組として、市町が交通事業者等と連携して行う、AIデマンド交通などの新たなモビリティサービスの導入を支援し、デジタル技術の活用による業務の効率化や生産性の向上を図っていきます。
 さらに、交通事業者に対して、この度の補正予算に盛り込まれた、賃金引上げと柔軟な働き方を同時に導入する中小企業者等への支援制度を活用し、運転士の労務環境の改善に取り組むよう、働きかけてまいります。
 県としては、今後とも、市町や関係団体等と連携しながら、こうした取組を着実に推進することにより、地域住民の日常生活に不可欠な地域公共交通の担い手確保に積極的に取り組んでまいります。

1 食料安全保障の基本となる農地の整備について

 身の周りで、モノやサービスの値上げが相次いでいる。
 こうした中、国において、今後1年をかけて「食料・農業・農村基本法」の改正に取り組むこととされた。
 この法律の改正は、世界の社会・経済情勢、気候変動、農家の減少など、刻々と変化する国内外の状況への対応が求められていることを受けて、検討が開始されるものである。
 我が国の食料安全保障は、国内農業生産の増大を基本として、これに輸入と備蓄とを適切に組み合わせることが基本理念となっており、輸入が縮小、又は途絶した時には、農地などの農業生産資源だけが頼りだ。
 今後も食糧不足や価格の高騰が懸念され、リスク対策をさらに強化し、新たな時代の食料安全保障を確立していかなければならない。
 本県においても、農業生産の増大を図るため、今ある農地を優良な農地として整備し、フルに有効活用して必要な食料を可能な限り確保できる状況を創り出していく必要がある。
 このピンチとも言える状況は、農業を魅力ある産業として成長させ、美しい農村を次世代に引き継いでいくチャンスであり、極めて重要な時を迎えている。
 食料安全保障の基本となる農地の整備について、今後どのような姿勢で臨まれるのか所見を伺う。

答弁 知事
 国本議員の御質問のうち、私からは食料安全保障の基本となる農地の整備についてのお尋ねにお答えします。
 農産物の安定的な生産体制の確立に向けて、農地の集積や、農産物の高付加価値化などを推進し、中核経営体を中心とした次代の担い手が、多様な営農を展開できるように、その基礎となる優良な農地の確保が重要と考えています。
 このため、私は、農地整備の推進と集落営農法人等の育成に一体的に取り組んできたところであり、約23,400ヘクタールの区画整理や、約2,100ヘクタールの水田高機能化が実現するとともに、299の集落営農法人と14の法人連合体が設立されたところです。
 こうした中、社会・経済情勢や気候変動、農家や農地の減少などにより、食料安全保障の重要性が一層増しており、国において「食料・農業・農村基本法」の見直しに向けた検討が開始されています。
 こうしたことを踏まえ、私は、本県農業の持続的な発展に向け、農地の生産性をさらに向上させ、有効活用していくための農地整備を、強力に進めていく考えです。
 具体的には、効率的な営農展開が図られるよう、意欲ある担い手への農地集積を一層促進し、自動走行農機やICT水管理等、大幅な省力化が期待できるスマート農業の導入に対応する区画整理など、より生産性を高める整備を推進します。
 併せて、これらの農地をフル活用するため、麦、大豆、園芸作物など、市場ニーズに即して様々な品目を組み合わせた営農を容易にする、地下水位制御システムの整備等、水田高機能化に引き続き取り組みます。
 また、耕作条件の不利な中山間地域の農地については、地形や地域の実情を踏まえ、農業機械の作業効率を確保したうえで、区画の大きさや配置を工夫した整備を行い、リモコン式草刈機などの導入促進により、維持管理労力の負担軽減を図ります。
 こうした農地整備を計画的かつ円滑に推進するためには、土地改良区や農業者を中心とした十分な話し合いによる、実効性の高い整備計画づくりが不可欠であることから、市町、土地改良事業団体連合会などと緊密に連携し、地域における合意形成を支援します。
 私は、美しい農村を次世代に引き継ぐため、市町や関係団体等と連携し、食料安全保障の基本となる農地の整備を積極的に進め、持続可能な力強い農業の実現に全力で取り組んでまいります。
 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

2 高齢化が進む集落営農法人の今後の方向性について

 県では、圃場整備に合わせ、地域単位で農業経営を展開する集落営農法人の育成を進め、若者の就業やスマート農機の導入が可能となる法人連合体の形成を進めてこられた。
 その結果、農業経営体の平均経営規模は大幅に拡大し、毎年100名を超える新規就業者の約半数が法人に就業するという、良い流れが生まれつつある。
 一方で、こうした流れは、幼少時代から農作業を経験してきた世代が定年後、地元に戻って農業法人の経営に参画することで成り立っているという背景がある。
 しかしながら、定年延長などの動きもある中で、定年後に地元に戻る人が減少し、法人構成員の世代交代が、なかなか進まない状況になっている。
 さらに、水稲など土地利用型経営においては、草刈りや水回りなどを、地域の高齢者にも担ってもらっているのが実情で、こうした農作業からリタイアされる方も増えている。
 こうした状況が続けば、本県農業を支えてきた集落営農法人の機能が低下し、本県農業の衰退にもつながりかねない。
 地域の農業者が高齢になりながらも、次の世代に農地や技術ノウハウを繋ぐために踏ん張っている今こそ、県として、集落営農法人の今後の方向性をしっかりと示す必要がある。
 高齢化が進む中においても、本県農業の中核を担う集落営農法人が継続して安定した経営が可能となるよう、今後どのように取り組まれるのか所見を伺う。

答弁 部長
 高齢化が進む集落営農法人の今後の方向性についてのお尋ねにお答えします。
 担い手の減少・高齢化が進む中、小規模経営が多い本県農業を持続的に発展させるためには、経営規模を拡大し、効率的な経営が行えるよう、集落営農法人や広域で事業を展開する法人連合体を核とした生産構造を構築することが重要です。
 このため、県では、これまで、JA等と連携し、集落営農法人等の中核経営体の育成を重点的に推進してきたところであり、これらの法人が雇用の受け皿ともなり、地域農業を牽引しています。
 こうした中、経営規模のさらなる拡大を志向する法人がある一方で、お示しのとおり、構成員の世代交代が円滑に進まず、今後の経営の継続が困難となる法人も見受けられるようになっています。
 こうしたことから、昨年度、JA等と連携し、各法人を対象に、課題や今後の経営意向等に関する調査を実施したところであり、今後、結果の分析を行った上で、その状況に応じた支援の在り方等について検討することとしています。
 具体的には、それぞれの意向に沿って、近隣の連合体への参加や法人同士の統合も視野に入れ、市町等と連携し、経営継続に向け、集積した農地の再編などの合意形成を促進します。
 また、こうした再編により規模拡大を目指す法人等に対しては、専門家による経営計画の作成指導をはじめ、農業専門の求人サイト「アグポン」等による外部人材の確保や、省力化に資するスマート農機の導入など、ソフト、ハード両面から支援してまいります。
 加えて、若者の法人就業による世代交代を支援するため、新規就業者の確保・定着を図るとともに、来年度、農業大学校に「土地利用学科」を新設し、水田複合経営に取り組んでいる法人に参画できる人材の育成を進めます。
 県としては、関係団体等と緊密に連携し、高齢化が進む中においても、集落営農法人等が継続して安定した経営が可能となるよう、その育成と経営基盤の強化に積極的に取り組んでまいります。

3 瀬戸内海の漁業振興について

 本県の漁業産出額は年々減少しているが、半島や離島などを有する地域では、若者たちが活躍できる重要な産業の一つとなっている。
 私の地元熊毛郡においても、若者たちが新規漁業就業者として定着・活躍しており、特に、田布施地域では、そのほとんどが県外からのIターン組である。
 若者たちを受け入れ、未利用魚の一次加工や消費者への直接販売の活動を共にすることで、高齢化が進む地域の漁業を活性化しているのは、安定した漁獲があるからである。
 しかし、瀬戸内海では水産資源の減少なども指摘されており、漁業関係者の努力だけでは対応が難しい実態がある。
 県では、これまで、瀬戸内海の水産資源の確保に向けた様々な取組をされており、高く評価しているが、瀬戸内海の漁業をさらに活性化させるためには、多様な魚種が安定して漁獲できる環境を維持・整備する取組を加速していくことが重要である。
 そこで、瀬戸内海の漁業のさらなる振興に向け、資源管理や魚礁の整備について、今後どのように取り組むのか伺う。

答弁 部長
 次に、瀬戸内海の漁業振興についてのお尋ねにお答えします。
 近年、温暖化などによる魚介類の生息環境の変化等により、瀬戸内海においても漁獲量が減少する中、安定した漁獲を維持するためには、水産資源の維持・増大に繋がる資源管理や、魚礁などの漁場整備を進めることが重要であると考えています。
 こうしたことから、瀬戸内海では、重要魚種であるトラフグなどの休漁期間の設定や小型魚の採捕禁止などの資源管理の取組を進めてきました。
 また、付加価値の高いキジハタ等の種苗放流を行い、その生息環境の確保に向けた漁場整備を一体的に進めてきたところです。
こ うした中、国は、資源量を科学的に把握し、年間漁獲量の上限などを定める「新たな資源管理」と、栽培漁業を一体的に進めることとされており、県としても的確に対応することが必要です。
 また、栽培漁業と連動した漁場整備については、さらなる資源の増殖に向け、漁業者ニーズを踏まえた、水産生物の良好な生息・生育環境の創出に向けた取組を進めることが重要です。
 このため、デジタル技術を活用した科学的な生息量調査を強化し、漁業者の意見も聞きながら、稚魚の成育場を保護区域に設定するなど、実効性のある資源管理を進めていきます。
 加えて、海洋環境の変化も踏まえ、種苗放流の効果が最大限発揮されるよう、魚種ごとに最適な放流サイズや時期などを分析・検証し、資源管理と一体的な栽培漁業を推進します。
 また、これまでの漁場整備の取組を進めるとともに、利用実態やニーズを把握し、新規魚種を対象とする魚礁の整備などを盛り込んだ、新たな漁場整備計画を策定することとしており、こうした取組により安定した漁獲量を確保していきます。
 県としては、今後とも漁業者をはじめ、市町・関係団体と緊密に連携し、安定した漁獲ができる環境の維持・整備に向け、ソフト、ハード一体となった施策を展開することにより、瀬戸内海の漁業の振興にしっかりと取り組んでまいります。

4 脱炭素化に直面する中小企業への支援の充実強化について

 コロナ禍を乗り越えるための事業継続、急激な円安・原材料価格の高騰、賃金引上げ、そして、今後中小企業を待ち受けているのがカーボンニュートラルである。
 財務基盤が脆弱な中小企業の多くは、人材・情報面での制約があると同時に、脱炭素の取組が、直接新たな付加価値を生み出すことは稀であり、二の足を踏んでいるのが実態である。
 カーボンニュートラルへの対応がいずれ必要と感じつつも、日々の経営に追われ、自ら進んで具体的な方策を検討できるような状況にはなく、行政がきめ細かく支援していくことが不可欠と考える。
 脱炭素化の世界的な潮流の中、今後、中小企業は取引先から、組織や製品単位での温室効果ガス排出量の削減を求められていくと考えるが、脱炭素化に直面する中小企業への支援の充実強化に、今後どのように取り組むのか伺う。

答弁 部長
 脱炭素化に直面する中小企業への支援の充実強化についてのお尋ねにお答えします。
 脱炭素化の世界的な潮流の中、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量が企業価値に影響を与える状況となってきているなど、中小企業にとっても脱炭素化の取組は重要な課題となっています。
 しかしながら、中小企業においては、脱炭素化への対応方策等の情報が乏しいことや、設備導入コストが高いことなどから、その必要性を理解しながらも、取組を躊躇する企業が多い状況にあります。
 このため、現在策定を進めている「やまぐち産業脱炭素化戦略」において、中小企業に対する支援機能の強化を位置づけ、普及啓発をはじめ、経営・技術支援や資金支援など、きめ細かな支援に取り組むこととしています。
 まず、普及啓発に向けては、地球温暖化防止活動推進センターと連携し、省エネの効果や再生可能エネルギーの導入促進に向けたセミナーの開催や、省エネ診断の実施によるCO2削減効果の「見える化」などを進めていくことにより、中小企業の理解促進を図り、具体的な取組に繋げてまいります。
 経営・技術支援については、やまぐち産業振興財団や産業技術センター、商工会議所等の支援機能を強化するとともに、各機関が連携した一体的な支援体制の構築を検討し、その下で企業課題に応じた効果的な伴走支援を行っていきたいと考えています。
 資金支援については、脱炭素化に向けた設備投資等に対する県制度融資の充実や、国の補助制度等の活用に向けたサポートを行うとともに、県独自の支援制度についても検討してまいります。
 さらに、脱炭素社会への変革をビジネスチャンスと捉えた取組も重要であることから、環境・エネルギー分野など、これまで取り組んできた成果や強みを活かし、産学公が連携した研究開発や新事業展開の取組を支援してまいります。
 脱炭素化への対応は、国・地方が一丸となって取り組むべきものであり、県としては、国に対して中小企業支援の強化を求めるとともに、これから素案を取りまとめる戦略において、しっかりと検討を進め、中小企業への支援の充実強化に積極的に取り組んでまいります。

5 デジタル社会を支えるインフラ整備について

 デジタル技術は人口減少など地方の社会課題を解決するカギで新しい価値を生み出す源泉である。農林水産業の振興などの政策において、県も知事が先頭に立ちデジタル技術を活用した取組を積極的に展開している。
デジタルを活かした取組を県内各地で進めるには、その前提となるデジタルインフラの整備が不可欠である。「デジタル田園都市国家構想」でも重要な柱に位置付けており、その核となる光ファイバを2027年度末までに世帯カバー率99.9%とする目標が示されている。
 こうした中、県ではやまぐち情報スーパーネットワークの今後の在り方が検討されている。YSNは光ファイバの基幹網として、ケーブルテレビ事業者や大学など幅広い分野と中山間地域をはじめとする県内各地域で活用され、これまで多くの県民の暮らしや事業者の活動を支えてきた。
県内どの地域も取り残すことなくデジタル化を進めるためには、YSNという貴重な財産を今後も有効活用するとともに、国や市町、関係事業者等と連携して、光ファイバなどが必要な地域の整備を着実に進めていただきたい。
「やまぐちデジタル改革」を推進していく上でも重要となる、光ファイバなどのデジタル社会を創り支えるインフラ整備について、今後どのように取り組まれるのか伺う。

答弁 部長
 デジタル社会を支えるインフラ整備についてのお尋ねにお答えします。
 デジタル化の推進にあたっては、その基盤となる光ファイバ等のデジタルインフラの整備が不可欠です。
 このため、県では、市町等と連携し、その整備促進に向けた取組を進めており、お示しの「やまぐち情報スーパーネットワーク」YSNは、全県的な基幹網として、通信事業者の県内各地域への光ファイバ網の拡張等に活用されてきました。
 こうした中、この度、YSNの将来の方向性について、有識者によるあり方検討会で、様々な観点から検証が行われたところです。
 その結果、YSNは、コスト面で将来的にも民間サービスより優位性があることや、デジタル化が急速に進展する中で財産的価値が高まっていることなどにより、今後も、県の強みとして積極的に活かすべきとされたことから、県では、デジタル・ガバメントの推進や、教育・医療などの幅広い分野でYSNの更なる有効活用を図っていきます。
 加えて、YSNを基盤とするケーブルテレビ事業者等と連携し、光ファイバのユニバーサルサービス化で創設が見込まれる不採算地域への支援を活かした、光ファイバの整備促進にも取り組みたいと考えています。
 また、光ファイバなどが必要な地域における整備を着実に進めるため、「デジタル田園都市国家構想」を掲げる国や、市町との連携を強化していきます。
 まず、国に対しては、全国知事会等を通じて、地方の状況をしっかりと伝え、地方を後押しする光ファイバの支援制度の拡充や、都市部に遅れることのない5Gの整備等を強く求めていきます。
 さらに、国が都道府県や通信事業者等を構成員として設置する、地元ニーズに沿った整備を進めるための地域協議会において、県内整備への働きかけや、地域格差の是正に向けた、光ファイバ未整備地域での5Gの先行整備の提案などを行っていきます。
ま た、市町との連携については、光ファイバのユニバーサルサービス化も踏まえ、個々の地域の状況をより詳細に把握し、具体的な整備手法等を協議・調整する場づくりなどを、新たに検討したいと考えています。
 県としては、引き続き、国や市町、通信事業者等としっかりと連携し、YSNも有効に活用しながら、光ファイバ等のデジタルインフラの整備促進に向けて、積極的に取り組んでまいります。

6 農業高校のあり方について

 農業教育は、農業やその関連産業を支える職業人を育成する重要な産業教育の一つである。
 近年では、地域との協働により地域課題の解決を図る探究的な学びの取組も進められている。こうした教育活動は、地域とのつながりが深い農業高校ならではのモデルになる取組と考えており、今後の継続や発展を大いに期待している。
 一方で、いわゆるスマート農業の取組が進みつつあり、新しい時代の農業の担い手の育成をめざした、より専門性の高い教育活動が求められるなど、今後、農業教育はますます重要になってくるものと考えている。
 そこで尋ねる。
 県教委では、将来構想を策定し、特色ある学校づくりに向けた取組が進められると思うが、本県における農業高校のあり方や方向性について、どのように考え、農業教育の充実に取り組んでいこうとしているのか、御所見を伺う。

答弁 教育長
 農業高校のあり方についてのお尋ねにお答えします。
 少子高齢化や人口減少等による農林業の担い手不足が進む中、新たな時代において持続可能な農林業等を創造できる人材や、地域の農林業や関連産業を担う人間性豊かな職業人の育成が求められており、農業高校が果たす役割は重要であると考えています。
 このため、本県の農業高校では、基礎的・基本的な知識・技術の習得はもとより、専門性の向上や実践力の育成のため、作物の栽培方法等について学ぶ農業現場での技術研修や、商業科等の異なる学科と協働しながら、それぞれの専門性を生かした商品開発や販売活動などに取り組んでいるところです。
 また、お示しの田布施農工高校では、国の研究事業を活用し、産学官のコンソーシアムを構築することにより、地域と学校で、めざす地域人材の姿を共有しながら、担い手不足や耕作放棄地等の地域課題の解決に向けた教育活動に取り組み、将来、地域に貢献したいと考える生徒や県内就職を希望する生徒の増加へとつながっています。
 こうした中、県教委では、本年3月に策定した「第3期県立高校将来構想」において、これからの農業教育の方向性として、生徒の興味・関心を就農につなげる教育活動や、新しい時代の農業の担い手を育てる教育活動などの充実を掲げたところです。
 今後は、この方向性に沿って、若手就農者とのディスカッションや小中学校への出前講座、地元企業との共同研究など、地域や産業界と連携・協働した取組をとおして、生徒に農業の魅力ややりがいを実感させるとともに、職業観や勤労観を一層育んでまいります。
 また、農業用ドローンや自動操舵トラクターなど、最先端の産業教育装置を活用した教育活動を推進するとともに、スマート農業に力を入れている県立農業大学校との連携を強化するなど、農業の技術革新と高度化等に対応した教育活動の充実に取り組むこととしています。
 こうした農業教育を全県的に推進するため、地域の特色を生かした農業高校を県内にバランスよく配置することも検討してまいります。
 県教委といたしましては、新たな時代において、本県の地域・社会を支え、農業の持続的な発展を担う人材の育成に向け、将来構想の方向性に沿って、農業教育の一層の充実を図ってまいります。

1 インフラマネジメントの高度化について

 上関大橋の損傷事故から1年余りが経過し、本復旧工事に着手したが、今回のような事故が二度と起こらないよう、県には、10月に公表された復旧検討会議の報告書に基づいた維持管理や老朽化対策を着実に実施していただきたい。
 一方、県が管理する4千を超える橋梁を今後、順次調査・点検していくと、膨大な時間と労力を要することが予想される中、私が特に重要と考えるのが、デジタル技術の活用等によるインフラメンテナンスの高度化である。
 また、橋梁だけでなく、他の公共インフラの老朽化対策も大きな課題となっている。
 県は、「日本一の安心インフラやまぐち」を掲げ、橋梁や河川の維持管理におけるデジタル技術の活用に取り組んでいるが、今後は、その他の施設についても活用の対象を拡げ、インフラマネジメントの高度化を推し進めるべきだと考える。
 そこで、今後、橋梁をはじめとした公共土木施設の老朽化が一斉に進行する中、迅速で適切な維持管理を図るため、県は、インフラマネジメントの高度化にどのように取り組むのか、所見を伺う。

答弁 知事
 国本議員の御質問のうち、私からは、インフラマネジメントの高度化についてのお尋ねにお答えします。
 道路や河川等の公共土木施設は、経済活動や県民生活を支える重要な社会基盤として、恒常的に機能を発揮することが求められています。
 しかしながら、本県においても、高度経済成長期に集中的に整備した施設の老朽化が進み、今後一斉に更新時期を迎えることから、その対策が喫緊の課題となっています。
 そのため、私は、「やまぐち維新プラン」において、「災害に強い県づくり推進プロジェクト」を掲げ、常日頃から、適切に維持管理を行うとともに、施設ごとに長寿命化計画を策定し、計画的かつ効率的に老朽化対策を推進しているところです。
 また、昨年、損傷事故が発生した上関大橋をはじめとした施設の老朽化や、近年、頻発・激甚化する自然災害などに適切に対応するため、新たにデジタル技術等を活用し、より質の高いインフラマネジメントを行っていく必要があると考えています。
 具体的には、橋梁について、異状箇所の早期発見・早期対応を図るため、AIによる点検・診断システムや、ドローンによる3次元測量等のデータを活用し、将来の劣化を予測するシステムの構築を進めているところです。
 加えて、全ての橋梁の補修履歴や点検結果等の膨大な情報を一元化するデータベースを構築し、AIにより、優先的に補修する必要がある橋梁を即時に判断する先進的なシステムの開発にも取り組んでまいります。
 また、河川について、迅速かつ的確に変状を把握し、河川内の土砂掘削などをより効果的に行うため、今年度から、島(しま)田(た)川において、衛星やドローン等による新たな監視手法の構築に着手したところです。
 今後は、お示しのとおり、橋梁だけでなく、他の公共インフラの老朽化対策も大きな課題となっていることから、橋梁や河川での取組などを踏まえ、インフラマネジメントの高度化について、トンネルやダム等にも対象を拡大し、検討を進めていく考えです。
 私は、県民の暮らしの安心・安全はあらゆることの基本であるとの認識の下、公共土木施設の適切な維持管理を進めるとともに、デジタル技術等を活用し、計画的かつ効率的に点検や補修を実施することにより、「日本一の安心インフラやまぐち」を実現してまいります。
 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

2 企業による農業参入の促進について

 県では、全国に先駆けて、集落営農法人や連合体の育成に取り組まれてきたが、農家の減少や高齢化が進む現状においては、いずれ営農が困難になるという切実な声が聞かれるようになってきた。
 農家の減少や高齢化に歯止めをかけるためには、長期的な取り組みが不可欠であるが、私は、従来の農業の担い手に対する概念を広く捉えることで、この危機をチャンスに変えることができると考えている。
 田布施町では、これまで多くの企業が農業に参入してきた歴史があり、その理由は、企業が有するノウハウ・販路の活用や地域貢献など様々である。
 以前は、経営が好転しなかったために撤退されたケースもあったが、県や市町等のしっかりしたサポートがあれば、高い収益をあげる農業を実践することが十分可能である。
 また、関係機関が一体となって農業分野への企業参入を積極的に進めていくことが、本県農業の新たな可能性を示すことに繋がる。
 農業経営に意欲を示す企業を農業分野に受け入れ、本県農業の活性化に繋げることができるよう、今後、企業による農業参入の促進にどのように取り組まれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 企業による農業参入の促進についてのお尋ねにお答えします。
 小規模経営が多く、集落を単位として展開されてきた本県農業を持続的に発展させるためには、地域を支える担い手の確保が重要であることから、これまで新規就業者や中核経営体の育成に積極的に取り組んできたところです。
 こうした中、本県においては、担い手の減少や高齢化が進み、今後の地域農業の活力低下が懸念されることから、多彩な人材やノウハウ、ネットワークを有し、持続的農業の実践や地域雇用の維持・増進等が期待できる、企業による農業参入を促進していくことが重要です。
 このため、農業を志向する企業がスムーズに参入し、定着・発展できるよう、事前相談から就農に至るまで一貫して支援するとともに、企業参入における大きな課題である技術習得等へのサポートを強化することとしています。
 まず、一貫した支援については、企業からの問い合わせに適切に対応できるよう、市町や農業経営支援センター等と連携した相談体制を整備します。
 特に、企業による農業参入に当たっては、その地域の理解や協力が不可欠であることから、参入前の段階で双方の話し合いの場を設定するなど、企業と地域が協力・連携できる仕組みを構築します。
 また、参入の形態には、企業自らによる経営のほか、農作業受託や既存法人への出資等、様々な形があることから、適切な方法を選択できるよう、必要に応じて司法書士等の専門家を派遣するなど、企業に寄り添った対応を行います。
 さらに、農地中間管理機構等を活用した農地の集積や、国や県事業の活用により、経営規模に適した機械・施設等の整備を支援します。
 次に、技術習得等に向けたサポートの強化については、地域の特性に応じた栽培品目を選定できるよう、農林水産事務所やJAを交えた検討を行った上で、農業大学校の社会人研修制度の活用等により、技術習得や資格取得の支援に取り組みます。
 県としては、本県農業を新たな視点で活性化できるよう、市町やJA等の関係団体と連携しながら、地域の重要な担い手となりうる企業の農業参入を積極的に促進してまいります。

3 児童虐待防止対策の推進について

 児童虐待の防止は、社会全体で取り組むべき極めて重要な課題となっている。このため、毎年11月の「児童虐待防止推進月間」には、児童虐待問題に対する深い関心と理解を得るため、「オレンジリボン・キャンペーン」が展開され、県では、子育てに悩む家庭をいち早く見つけ、早期対応につなげるため、「189(いちはやく)サポーター」や「ヤングサポーター」の養成、地域見守り活動に取り組む虐待防止全力宣言企業の登録などに積極的に取り組んでいる。
 しかしながら、児童虐待は増える一方である。この背景には、これまでは把握できなかった虐待が、学校や地域の方々の見守りや支えにより把握されるようになり、児童相談所等の行政機関で支援されるようになってきたことも影響していると考えられる。そして、警察からの通告が大きく増えていることが件数の増加につながっているとされている。
 このため、県では、平成31年4月から、中央児童相談所に警察からの出向職員を配置し、児童虐待相談への対応体制を強化しているが、警察との連携が大きな効果を上げている状況を考えれば、今後、学校や地域による見守り活動を強化することに加え、警察との連携をさらに強化し、児童虐待の未然防止や早期対応に向けた社会全体の仕組みづくりを進めていくべきではないかと考える。
 そこで児童相談所に配置する警察からの出向職員の増員をはじめ、児童虐待の未然防止・早期対応に、今後、どのように取り組まれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 児童虐待防止対策の推進についてのお尋ねにお答えします。
 昨年度の全国の児童相談所における児童虐待相談対応件数は、20万件を超えて過去最多となり、本県においても過去2番目に多い729件となるなど、依然として深刻な状況にあります。
 児童虐待は子どもの人権や生命に関わる重大な問題であることから、虐待を未然に防止し、早期発見・早期対応につなげることが重要であると考えています。
 このため、県では、次代を担う子ども達を虐待から守るため、児童相談所の体制強化や、社会全体で子育て家庭を見守る環境づくりを一層進めることとしています。
 まず、児童相談所の体制強化については、専門的な相談体制の充実に向け、児童福祉司や児童心理司の計画的な増員を図るとともに、法的対応力を強化するため、昨年度から、全ての児童相談所において、弁護士による助言や指導が、常時、受けられる体制を整備しているところです。
 また、虐待通告件数の増加を踏まえ、警察との連携強化を図るため、令和元年度から中央児童相談所に警察官1名を配置し、児童相談所の緊急時における対応力の向上に努めています。
 こうした中、全国で重篤な事案が後を絶たないことから、子どもの安全を最優先で確保していくため、お示しの警察官の増員も含め、今後とも、警察との一層の連携強化に努めてまいります。
 次に、社会全体で子育て家庭を見守る環境づくりについては、子育てに悩む家庭に助言等を行う「189(いちはやく)サポーター」や、若い世代から体罰によらない子育てを学び友人等に広げていく「ヤングサポーター」を養成しており、現在千名を超えるサポーターが地域で活動されています。
 また、地域の見守り活動に取り組む「虐待防止全力宣言企業」については、現在35の企業等に登録いただいており、配達業務を通じた声かけや、各店舗へのポスター掲示など、企業の特色を生かした取組を行っていただいているところであります。
 今後は、サポーターや登録企業のさらなる拡大に向け、オンラインを活用したサポーター養成研修の実施や、取組の優良事例のPRを行うなど、社会全体で子育て家庭を見守り支える活動の輪を広げてまいります。
 県としましては、今後とも、警察や関係団体等と連携し、次代を担う子どもが安心して健やかに成長できるよう、児童虐待防止対策の一層の推進に、積極的に取り組んでまいります。

4 犬猫の適正な飼育管理の推進について

 動物愛護管理法の改正により、来年6月から、マイクロチップの装着・登録が義務付けられるが、その対象はブリーダーやペットショップなどに限られているので、当面の対策として、里親探しや引き取り先のない犬猫を飼育する動物愛護団体への支援や野良犬の捕獲や野良猫の引き取りは引き続き必要である。
 また、飼い主が自覚と責任をもって適正に飼養することについて、より一層の普及啓発を行うとともに、幼い頃から動物への接し方や命の大切さを学ぶ機会を提供し、県民の動物愛護意識の醸成を図ることも重要と考える。
 一方で、犬猫を遺棄させない、自然繁殖をさせないためには、将来的には、一定の強制力を持った手法を導入するなどしなければ、いつまで経ってもこの問題は解決しないと考える。
 そこで尋ねる。県内での犬猫の遺棄・自然繁殖という悪循環を断ち切り、犬猫が好きな方も苦手な方も納得できる、適正な飼育管理を推進するため、従前より一歩踏み込んだ対策を検討すべきではないかと考えるが、所見を伺う。
 そこで児童相談所に配置する警察からの出向職員の増員をはじめ、児童虐待の未然防止・早期対応に、今後、どのように取り組まれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 犬猫の適正な飼育管理の推進についてのお尋ねにお答えします。
 人と動物とが共生する社会の実現に向け、県では、動物愛護管理推進計画に基づき、動物の適正な飼養管理や愛護意識の向上等に関する諸施策を総合的に推進しているところです。
 具体的には、県が収容した犬猫について、動物愛護団体の協力を得ながら譲渡を推進するとともに、譲渡後の適正飼養や動物愛護団体の負担軽減を図るため、マイクロチップの装着やノミ等の寄生虫の駆除を進めています。
 また、野良犬による危害を防止するため、市町と連携した捕獲を行うとともに、野良猫の引取り数の削減に向けて、地域で不妊去勢措置や飼養管理を行う地域猫活動の普及に取り組んでいます。
 さらに、児童への動物ふれあい会等を通じて、命の大切さを学ぶ機会を提供するなど、動物愛護意識の醸成を図っているところです。
 しかしながら、依然として大きな課題である犬猫の遺棄や自然繁殖に歯止めをかけるためには、お示しのとおり、適正飼養についての一層の普及啓発や幼い頃からの動物愛護意識の醸成を図ることが重要です。
 このため、新たに実施するe-ラーニング方式による飼い方講習会や、ペットとの同行避難訓練などの機会も捉えて、適正飼養を一層普及してまいります。
 また、今年度設置した「山口県動物愛護管理推進協議会」において、学校教育と連携した動物愛護意識の醸成を図る取組等を検討してまいります。
 こうした取組に加え、マイクロチップの装着による所有者明示は、犬猫の遺棄防止にも有効であることから、動物愛護管理法の改正の趣旨を踏まえ、山口県獣医師会と一体となって、飼主への周知を徹底するとともに、全ての犬猫販売業者に対する監視・指導を強化してまいります。
 県としては、今後とも、市町や関係団体等と連携して犬猫の適正な飼育管理の推進に積極的に取り組んでまいります。

5 学校における学生の適切な体験機会の確保について

 コロナ禍は社会全体に大きな影響を及ぼし、中でも学校生活への影響は計り知れないものがある。
 一時期、学校は臨時休業となり共に学ぶ機会が奪われ、再開後も、授業実施の制約や、運動会・文化祭・修学旅行など、多くの学校行事が中止・延期・縮小され、教育現場における体験活動の機会が奪われた。
 また、スポーツや文化活動等の部活動についても、自校の応援機会も含め、学生時代の貴重な体験の機会が、大きな制限を受けている。
 現在、国内の感染状況は落ち着いていることから、自校の応援に行けない状況があることは残念である。感染拡大防止ルールの遵守は必要だが、家族も含め自校を応援するという、学生生活の思い出づくりを全力でサポートするべきであり、それが可能であれば尚更である。
 県内において、競技によって応援の制限が違うことは問題と思う。競技の違いや上部団体の意向はあると思うが、高校生にとっては酷であり、大会運営や入場制限については学校や生徒目線で考えるべきである。
 そこで、コロナの時代にあっても、学校における学生の貴重な体験活動の機会が確保されるよう、県として積極的に関与し、支援していくべきと考えるが、如何か。

答弁 教育長
 教育に関する2点のお尋ねのうち、まず、学校における学生の適切な体験機会の確保についてお答えします。
 運動会や文化祭、修学旅行等の学校行事については、子どもたちにとって有意義な教育活動であり、特に、お示しの部活動の大会やコンクール等は、子どもたちの思い出に残る貴重な成果発表の場であることから、その機会を可能な限り確保することが重要であると考えています。
 このため、県教委においては、昨年度は、夏のインターハイや甲子園大会等の全国大会だけでなく、その予選となる県大会も中止となったことから、その代替大会として、やまぐち高校生2020メモリアルカップ及び文化発表会を県高体連や県高文連等との共催により開催いたしました。
 また、今年度は、春から夏にかけて新型コロナの感染拡大が続く中、部活動の大会やコンクール等が安全に開催できることを最優先に考え、新たな対策として、全ての高校生等を対象とした一斉のPCR検査や、感染レベルに応じた随時のPCR検査を行うなど、部活動をはじめとした学校の教育活動が継続できるよう取り組んでいます。
 こうした中、各種大会等の主催団体では、競技団体や施設の管理団体等が示す感染防止対策のガイドラインに則り、参加する生徒や運営に携わる教職員、観客等の安心・安全に最大限配慮され、準備段階から感染状況に応じた運営・実施方法について、総合的かつ、弾力的に判断されているところです。
 例えば、お示しの秋の大会においては、当初は無観客で開催予定であったものを、県内の感染状況等を踏まえながら、徐々に有観客に変更するなど、生徒や保護者の思いに寄り添った柔軟な大会運営をしていただいたところです。
 さらに、コロナ禍においても大会等の開催や観戦・観覧ができるよう、リモートによる大会の実施や、試合等の動画配信など、新たな取組も始まっています。
 県教委といたしましては、今後とも、関係機関や団体等と緊密に連携・協力しながら、子どもたちの貴重な体験活動の機会が確保されるよう、全力で取り組んでまいります。

6 県立高校の再編整備について

 本県の将来を担う子どもたちの資質・能力を高めていく教育環境づくりは非常に重要であると考えており、学校の再編統合や分校化が最善かつ唯一の方策であるならば、致し方ないと考えている。
 地域ぐるみで高校を支えていこうとする動きがある中、本県においては、全ての県立高校にコミュニティ・スクールが導入されており、今後一層、地域との連携・協働した教育活動が深まっていくものと思われる。
 こうした状況を踏まえ、今後の再編整備については、これまで以上に所在自治体や、地域の学校運営や教育活動への関わりなどの実情をしっかり把握した上で、再編整備の進め方を検討していく必要がある。
 今後、ICTを活用した学びや他校と協働した学びなど、学校の小規模化が進む中にあっても、今まで以上に質の高い教育活動の展開を期待する。
 現在、今後の高校改革の基本的な考え方や方向性を示す、次期県立高校将来構想の策定に向けて検討を進められているが、学校を取り巻く地域の取組の状況やICT教育の展開など、教育環境の変化等も踏まえながら、今後どのように県立高校の再編整備を進めていかれるか、所見を伺う。

答弁 教育長
 次に、県立高校の再編整備についてのお尋ねにお答えします。
 子どもたちが新しい時代に対応し、他者と協働して主体的に未来を切り拓いていく資質・能力を育成するためには、特色ある学校づくりと学校・学科の再編整備を推進し、より質の高い高校教育を提供することが重要であると考えていま
す。
 このため、年次的・計画的な再編整備に加え、全ての県立高校に導入したコミュニティ・スクールの仕組みを生かして、地域の声を反映した学校運営や地域の教育力を活用した教育活動に取り組むとともに、ICT環境の整備を進め、ICTを活用した教育の充実を図るなど、県立高校の特色づくりに努めているところです。
 こうした中、今後も、中学校卒業者数の継続的かつ急激な減少が見込まれることから、選択幅の広い教育や、生徒が他者と協働しながら切磋琢磨する環境づくりなど、高校教育の質の確保・向上を図るため、引き続き再編整備を進めることが必要となっています。
 再編整備に当たっては、お示しの熊毛郡地域の事例のように、学校と地域との連携が深まっているという状況もありますことから、学校を取り巻く地域の実情も踏まえながら、地域バランスや分散型都市構造にある本県の特性等を総合的に勘案し、全県的な視点に立って、適切な学校配置となるよう検討してまいります。
 また、今後のICT教育については、これまでの教育実践とICTを組み合わせて、一人ひとりに応じた個別最適な学びを進めるとともに、学校・学科の枠を越えた協働的な学びを発展させるなど、ICT環境を生かした教育を一層充実させることとしています。
 県教委といたしましては、新たに策定する県立高校将来構想に基づき、地元自治体とも連携しながら、引き続き特色ある学校づくりと学校・学科の再編整備を推進してまいります。

1 地域の実情に寄り添った中山間地域づくりの推進について

 昨年の上関大橋損傷事故は、今後の中山間地域対策を進めていく上での大きな課題を投げかけたと感じている。コロナ禍で、ただでさえ地域全体が疲弊する中、こうした事故や災害などで痛手を負った地域が、生活機能を維持し、活力を取り戻していくためには、他の地域とは異なる、配慮ある対応を行っていく必要がある。
 県では、来年度から、地域づくりの機運がある地域を対象に、元気生活圏の形成を支援する新たな取組を進めていくこととされている。元気生活圏づくりを強力に進めることは確かに必要だが、取組を進めるに当たっては、こうした地域に対して、一時的に、事業の優先採択など、特別な配慮を行うことが重要と思う。
 中山間地域づくりの推進に当たり、この度の上関町長島のように、事故や災害により他の地域と比較して著しい影響を受けた地域などもあることから、それぞれの地域の実情に寄り添ったきめ細やかな対応が必要であると考えるが、今後どのように取り組むのか、所見を伺う。

答弁 部長
 地域の実情に寄り添った中山間地域づくりの推進についてのお尋ねにお答えします。
 中山間地域においては、急激な人口減少や高齢化に伴い、地域や産業の担い手不足が深刻化し、コミュニティ機能の低下によって、集落機能の維持が困難な地域も生じています。
 こうした中山間地域を持続可能なものとするため、県では、市町と連携をしながら、集落の枠を超えた広い範囲で集落機能や日常生活を支え合う「やまぐち元気生活圏」の形成を推進しているところです。
 一方で、お示しのように、地域はそれぞれ置かれた状況が異なり、地域づくりに取り組む上での課題も一様ではないことから、地域づくりを進めるに当たっては、それぞれの地域の実情を踏まえ、その地域に合った進め方で取り組むことが重要です。
 また、長引くコロナ禍により、地域での話し合いや行事をはじめ、地域外との交流イベントも中止を余儀なくされるなどの影響が出ており、このことにも十分配意しながら、地域に寄り添った支援を一層充実してまいりたいと考えています。
 こうした中、県では、新年度新たに、元気生活圏の形成に向けて議論を開始する地域を対象として、伴走型の支援を行うとともに、元気生活圏づくりの柱となる事業を前倒して実施する取組を支援することで、生活機能の維持や地域の活性化につなげていく事業をスタートすることとしています。
 事業を進めるに当たっては、お示しの上関町のように、特別な事情を抱える地域もあることから、きめ細かく対応していくことが必要であり、市町と緊密に連携し、地域の実情を十分把握しながら、実態に応じた支援を行うなどの柔軟な対応を検討してまいりたいと考えています。
 県としては、今後もより多くの地域で、地域づくりの機運が高まり、元気生活圏の形成が着実に進んでいくよう、地域の実情に寄り添った中山間地域づくりの推進に積極的に取り組んでまいります。

2 橋梁の老朽化対策について

 本県は、上関大橋をはじめ、4,000橋を超える橋梁があり、地域産業や県民の暮らしに重要な役割を担っている。
全ての県民の安心・安全な暮らしを確保するため、今回のような事故が他の橋梁でも発生することがないよう、常に万全の対策を講じておく必要がある。
 上関大橋の再発防止策はもとより、県内すべての橋梁の安全性を確保するため、原因究明を行うとともに、その結果を今後の橋梁の維持管理や老朽化対策に活かしていっていただきたいと考える。
 今後も、今回のような予兆のない事故が生じる可能性があることを考えると、橋梁の異状をより早期に発見し、対処できる対策を進めていく必要があると思う。
こうした中、県が来年度、デジタル技術の活用などにより、橋梁の状況をこれまで以上に迅速かつ確実に把握できる体制が早期に整備されることを、強く期待している。
 そこで、上関大橋損傷事故の対応を踏まえ、県民の安心・安全なくらしを確保するため、橋梁の老朽化対策に、今後どのように取り組まれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 橋梁の老朽化対策についてのお尋ねにお答えします。
 橋梁は、道路ネットワークの形成に欠かせない施設であり、社会・経済活動や県民生活を支える重要な社会基盤として、恒常的な機能の発揮が求められています。
このため、県では、これまで、橋梁長寿命化計画に基づき、更新費用の平準化を図るなど、橋梁の効率的な維持管理や老朽化対策を推進してきたところです。
こうした中、昨年11月に上関大橋の損傷が発生したことから、検討会議を設置し、原因の究明や復旧対策などの検討を進めていますが、お示しのとおり、県内すべての橋梁の安全を確保するためには、今回の会議の検討結果を活かして、今後の橋梁の維持管理や老朽化対策を進めていく必要があると考えています。
このため、離島架橋や特殊な構造を持つ橋梁等において、来年度から、新たにデジタル技術を活用して、伸縮計や歪ゲージによる橋全体の定期的な変位計測や、主要部材の損傷・補修履歴、点検結果などのデータベース化を図り、異状箇所の早期発見・早期対応に取り組む考えです。
さらに、県が管理する橋梁の約6割を占める小規模橋梁において、AIによる点検・診断システムの構築を進め、点検の効率化と診断精度の向上を図ることにより、安全性・信頼性の確保に努めてまいります。
また、橋梁に関する情報は、県民が安心した生活を送る上で欠かせないものであることから、今後、橋の重要性や損傷の程度による公表基準を定め、適時、点検結果を公表する考えです。
県としては、今後とも、橋梁の維持管理や老朽化対策を計画的かつ効率的に進めるとともに、デジタル技術を活用することにより、異状を早期に発見し、速やかに対応する「日本一の安心インフラやまぐち」の実現につなげてまいります。

3 ジビエの振興について

 鳥獣被害対策は、防御や駆除を目的とする捕獲だけでなく食材として捕獲する野生鳥獣、いわゆるジビエを地域資源として位置づけ、地域の活性化に活かしていくという視点を持つことも大切だと考えている。
 ジビエの振興にあたっては、処理施設の設置に係るコストや衛生管理、猟友会構成員の高齢化など様々な課題があるが最も大きな課題は、野生鳥獣の捕殺場所と処理施設の距離が離れていることから、放血・解体までの時間が長くなることにより、全身に血がまわり、生臭い肉になったり、硬い肉になってしまうことである。
 処理施設の設置に関しては、地域の協力や理解が不可欠である。このため、県及び市町、関係団体が連携し、一体となった取組により、県内のどの地域で捕獲しても、迅速な放血や解体が可能な体制を構築することが本県ジビエ振興の大きな一歩になると思う。県内においてジビエ振興の機運が高まるよう、県には積極的な取組を期待する。
 野生鳥獣による農林業被害を低減する視点を持ちつつ、野生鳥獣の発生が多い中山間地域の活性化につなげるため、今後、ジビエ振興にどのように取り組まれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 ジビエの振興についてのお尋ねにお答えします。
 野生鳥獣による農林業被害が深刻化する中、中山間地域の活性化を図るためには、捕獲対策の強化に加え、ジビエを地域資源として有効活用することが重要であることから、市町等と連携し、ジビエの普及や利用拡大を図ってきたところです。
 この結果、県内に処理施設が15か所設置され、販売店が、道の駅を中心に40店舗に増加するなど、県内各地で取組が進んでいます。
 一方で、捕獲されたイノシシ等の利用率は5%に留まっており、更なる有効活用を図るためには、お示しのように、捕殺場所に近接して処理施設を設置するなど、適切な処理体制を構築し、意欲ある方々の取組を後押しする必要があります。
 このため、県では、市町や猟友会など関係団体と一体となって、地域の実情に応じた処理施設の整備を進めるとともに、整備後の円滑な運営やジビエの有効活用など、地域の主体的な取組を積極的に支援することとしています。
 具体的には、まず、地域の合意形成に向けた勉強会等を開催するとともに、施設整備に必要な構想の策定を進めます。
 次に、施設整備に向けて、規模や機能、設置場所等が適切なものとなるよう、衛生管理等の専門家の意見を踏まえた指導・助言を行い、国の交付金等を活用しながら、施設や機器の導入を図ります。
 また、施設の経営が安定するよう、6次産業化・農商工連携サポートセンターとも連携し、新商品開発や販路開拓などを支援します。
 県としては、鳥獣被害を低減し、中山間地域の活性化につながるよう、市町や関係団体等と一体となって、地域の主体的な取組を積極的に支援しながら、ジビエの振興に取り組んでまいります。

4 県産麦の振興について

 集落営農法人の経営において、米や大豆の裏作として冬に栽培される麦は欠かせない品目となっている。
 こうした中、ここ数年の麦の豊作等もあり、生産量が需要量を大きく上回ったことから、全国的に麦の作付面積を減らさざるを得ない状況にあると聞いている。
 麦の生産法人からは「収益を確保できなくなり今後の経営に大きな影響を及ぼす」、基盤整備の予定地域からは「営農計画作成の見通しが立たない」などの声が寄せられており、農業法人による規模拡大や若者たちの就業を阻害する要因にもなりかねないと懸念している。
 需要に応じた生産を行うことは商売の基本だが、麦に関しては、外国産の割合が圧倒的に多く、国内産に切り替えていくことで需要の拡大を図ることが可能だと思う。
 生産者の皆さんが安心して麦を作付できるよう、特に県産麦の需要拡大に向けて、今後、どのように取り組まれるのか、所見を伺う。
答弁 部長
 次に、県産麦の振興についてのお尋ねにお答えします。
 国において、麦は食料自給率向上に不可欠な品目とされ、本県でも、集落営農法人等の経営を支える重要な作物であることから、需要拡大と作付拡大を一体的に進めてきました。
 この結果、パンや味噌など県産麦の需要量は大幅に増加し、需要に応える生産も可能となったところです。
 こうした中、全国的な豊作により需給バランスが崩れたことから、本県においても、品種転換等の緊急対策を講じるとともに、国に対し、全国段階での需給調整等について、様々な機会を捉えて要望しています。
 一方、今後、法人等の経営安定のためには、麦の作付拡大が欠かせないことから、国の動きを待つことなく、本県独自の対策にも積極的に取り組んでいく必要があります。
 このため、JA等と連携し、更なる需要拡大と、実需者の求める高品質生産に向けた取組を強化することとしています。
 まず、需要拡大に向けては、味噌等の加工業者に対し、県産麦の一層の利用を働き かけるほか、販売協力店等と連携した販売促進イベント等を通じ、商品の魅力をPRします。
 また、新たな需要を創出するため、6次産業化・農商工連携サポートセンターと連携し、県産麦を活用する事業者の商品開発から販路開拓までの一貫した取組を支援します。
 次に、高品質生産に向けては、生産物の分析結果に基づく栽培改善など、きめ細かな指導、助言を行うとともに、加工適性の高い新品種の導入を進めます。
 県としては、生産者が安心して麦を作付けできるよう、引き続き、国への要望を行うとともに、JA等と緊密に連携しながら、県産麦の需要拡大にしっかりと取り組んでまいります。

5 新たな時代の人づくりについて

 「地域の再生」を担うのは「人」であり、「人づくり」なくして地域の再生は成し得ない。そして、若者の流出や減少が課題となっている本県において、「人づくり」は、地域の未来を担う子どもや若者の挑戦を支え、応援するような取組として進めることが重要だと考えている。
 先日示された「新たな時代の人づくり推進方針」の最終案では、6つの視点に基づき、幼児期から社会人までの成長段階に応じた、様々な取組が盛り込まれている。
 また、来年度当初予算案では、「人材育成」が大きな柱の一つとされ、乳幼児期からの育ちと学びへの支援、子どもの創造力・表現力の育成、グローカル人材の育成など、新たな取組が掲げられている。
 こうした施策により、子どもや若者が、しっかりとした成長の基盤を築き、自分の枠を飛び越えて世界観を広げていけるよう、そして、未来を担う若い世代が、山口県には質の高い学びの場やチャレンジへの応援があると感じられるよう、県には、県内の企業や団体、大学など様々な主体が一体となって進める取組の推進役を担って欲しい。
 本県の若者がこれからの時代を生き抜くことができるよう、「新たな時代の人づくり推進方針」に基づき、今後の「人づくり」にどのように取り組むのか、所見を伺う。

答弁 知事
 国本議員の御質問のうち、私からは、新たな時代の人づくりについてのお尋ねにお答えします。
 今私たちが暮らす社会は、急速な技術革新やグローバル化が進展する中で、デジタル化等の社会変革を進め、コロナの時代の「新たな日常」を創り上げることが求められるなど、従来の延長線上にはない、将来の予測が困難な時代を迎えています。
 こうした中にあって、私は、本県の将来を担う人材の育成がこれまでにも増して重要になると考え、困難な課題にも果敢に挑戦し、乗り越えていくことのできる若者を育てていけるよう、県議会の御意見もお伺いしながら、「新たな時代の人づくり推進方針」の策定を進めてまいりました。
 今後は、お示しのように、方針に掲げた6つの視点に基づいて、「ふるさと山口に誇りと愛着を有し、高い志と行動力をもって、地域や社会の課題を自ら発見、他者と協働しながら解決し、新たな価値を創造できる人材」、こうした本県が目指す人材の育成に向け、取組を本格化してまいります。
 この6つの視点のうち、「生涯にわたる人づくりの基礎を培う」では、新年度、「乳幼児の育ちと学び支援センター」を創設し、幼児教育と保育の質の更なる向上を図るとともに、様々なツールを活用した体験イベントを開催し、創造力や表現力など子どもたちの豊かな心を育成する取組を進めます。
 また、「新たな価値を創造する力を育む」においては、小学生から高校生までの児童生徒を対象に、外国人留学生との対話を通じて、世界に向けた広い視野と身近な問題に目を向ける視点の両方を育むプログラムにより、グローカル人材の育成に取り組んでまいります。
 さらに、大学生等が、社会人とともに先端テクノロジーを活用しながら、地域課題の解決につながるソリューションやイノベーションの創出を体験する取組など、新たな学びの場を提供し、課題解決力やAI等の新しい技術を活用する力を育んでまいります。
 こうした取組を関係部局が一体となって進めるため、庁内を横断する組織である「新たな時代の人づくり推進室」を設置するとともに、外部の有識者から最先端の専門的知見を採り入れる仕組みも設けることで、取組を不断に見直し、内容の充実と質の向上を図っていく考えです。
 さらに、大学や企業・関係団体など、幅広い主体と人づくりの目指す方向性や課題認識を共有し、一体となって取り組んでいくため、全県的な推進組織の設置についても検討を行ってまいります。
 私は、次代を担う子どもや若者たちが、あまねく学びを通じて「志」を育み、その持てる能力を最大限に発揮して行動していくことができるよう、市町はもとより、学校や地域、団体、企業等と連携・協働しながら、新たな時代の人づくりに全力で取り組んでまいります。
 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

6 産業教育の充実と人材育成について

 専門高校に先端技術を学ぶ環境が整備され、産業界とも連携しながら職業教育の充実が進んでいくことで、地域産業を牽引する人材の育成が図られるとともに、恒常的な人手不足に直面している産業界の人材確保と、県内就職の推進による若者の県内への定着に繋がっていくことに大いに期待している。
技術革新の進展やDX等を見据えた、専門高校における産業教育設備の整備を通じて、今後の産業教育の充実と人材育成にどのように取り組まれるのか、御所見を伺います。今後の「人づくり」にどのように取り組むのか、所見を伺う。

答弁 教育長
 産業教育の充実と人材育成についてのお尋ねにお答えします。
 近年の科学技術の進展等に伴い、専門高校では、産業界で必要とされる専門知識・技術の高度化への対応と実践的な知識・技術の習得が求められており、先端技術を学ぶ環境の整備や産業界等と連携した教育活動の充実を図ることは重要であると考えています。
 このため、県教委では、これまでも小型3Dプリンタなどの整備を行うとともに、多様な知識・経験を持つ企業の熟練技能者等を講師とした技術講習会や、地元企業等が有する施設・設備などを活用した学習活動を進めてきたところです。
 また、今年度から実施している、やまぐちハイスクールブランド創出事業において、ICTも活用しながら協働して模擬会社「山口魅来」を設立し、地元企業と連携して商品開発に取り組むなど、新たな価値を創出することのできる人材の育成にも取り組んでいます。
 こうした中、専門高校等においては、Society5.0時代における地域の産業を支える人材の育成に向け、新たに、最先端のデジタル化に対応した産業教育装置を整備することで、従来の施設・設備では実現できなかった教育活動を展開することとしています。
 具体的には、例えば、工業高校では、最新の金属造形3Dプリンタやマシニングセンタを整備することにより、プログラミング技術の習得を図るとともに、精密かつ複雑な形状の機械加工を行ってまいります。
 また、農業高校では、インターネットの地図情報を活用して農薬散布ができるドローンなどのスマート農業装置を整備し、先進農家と連携しながら実践的な実習を行うこととしています。
 さらに、地域と協働して、地域課題の解決につながる教育活動を展開している田布施農工高校では、電子制御水理実験装置を整備することで、科学的根拠を踏まえた防災活動を行うこととしており、こうした活動を通じて、卒業後、様々な企業等において即戦力として活躍できる生徒の育成を図ってまいります。
 県教委といたしましては、地域や産業界等と連携しながら、専門高校における産業教育の一層の充実を図り、本県産業を牽引することのできる人材の育成に努めてまいります。

1 デジタル技術を活用した地域活性化について
(1)コロナ禍におけるスマート農業の推進について

 本県においても、農業分野でのドローンの導入や活用が始まっており、ドローンをはじめとしたスマート農業機械の活用は若い人たちの活躍の場の創出や農業の軽労化・省力化に有効であり、これまで以上に積極的な導入が必要である。
一方、コロナ禍において、新しい生活様式に対応した取組が農業界でも求められており、1人の構成員の離脱が農業経営の継続可否に直結するため、3密を回避し、少ない人数でも作業を行うことができる技術体系を早急に構築することが求められている。
県においては、実情に合わせたスマート農業技術の開発や実証を進めているが、特に、農薬散布用ドローンのように一定の水準まで達しているスマート農業機械等については積極的に導入を進めていくことが重要と考える。
 ウィズコロナ、アフターコロナの時代において、今後、本県農業の活性化に向けたスマート農業の推進にどのように取り組んでいくのか、所見を伺う。

答弁 部長
 デジタル技術を活用した地域活性化についてのお尋ねのうち、コロナ禍におけるスマート農業の推進についてお答えします。
本県農業の活性化を図るためには、日々進化し、多様化するスマート農業技術の積極的な活用が必要であることから、本年4月に「山口県スマート農業導入加速協議会」を設立し、セミナーの開催等を通じて、生産現場への導入の機運を高めてきたところです。
 こうした中、感染症の収束が見通せず、農業分野でも新しい生活様式への対応が求められていることから、少ない人数で作業を行うという視点も重視しながら、スマート農業技術の導入を加速していくことが重要です。
 このため、企業・大学等との連携による新技術の開発・実証や農業大学校における技術指導等の取組に加え、新たに、コロナ対策に積極的に取り組む中核経営体を対象に、実用段階にあるスマート農業機械を緊急的に導入することとしています。
具体的には、まず、中小企業診断士などのコロナ対策にも精通した専門家を中核経営体に派遣し、感染症防止対策を徹底することで生じる技術的・経営的課題と、課題に対応したスマート農業機械の活用方法等を整理した「コロナ対応経営強化プラン」の作成を支援します。
また、強化プランに基づくスマート農業機械の導入にあたっては、協議会に設置した支援チームが中核経営体に寄り添いながら、これまでの実証試験で得られた成果を踏まえ、導入すべき機械の選定や利用計画の策定等をきめ細やかに支援します。
県としては、ウィズコロナ、アフターコロナの時代においても、生産者が安心して農業経営に取り組めるよう、スマート農業の推進に積極的に取り組んでまいります。


(2)ドローン等のデジタル技術を活用した中山間地域振興について

 今後、様々な規制が緩和され、ドローンの性能の向上によって、物流分野における活用が期待される。
 国土交通省の調査では、「生活上で最も困っていること」の項目として、医療関係の不安に次いで、「近くで食料や日用品を買えないこと」が挙げられており、中山間地域に暮らす高齢者の大きな不安の一つとなっている。
 この課題の解決に向けては、これまでも様々な施策が展開されているが、現在、開発されつつあるデジタル技術を活用した手法も取り入れていくことが必要ではないかと考えており、移動手段を持たない、中山間地域や離島で暮らす高齢者にとって、大きな可能性を示すことになるのではないか。
 デジタル化が本格化する今こそ、こうした技術を産業振興だけでなく、地域振興にもつなげていく視点を持つことが重要だと考えている。
 本県の中山間地域で暮らす方々の生活支援や地域の活性化を図るため、ドローンをはじめとしたデジタル技術の導入や活用に向け、今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺う。

 答弁 部長
 ドローン等のデジタル技術を活用した中山間地域振興についてのお尋ねにお答えします。
 中山間地域においては、人口減少や高齢化の急速な進行に伴い、公共交通の撤退や生活店舗の廃止等が進み、地域によっては、移動や買い物など日常の生活サービスの確保に支障が生じている状況にあります。
 このため、県では、地元市町と緊密な連携を図りながら、地域が主体的に取り組むデマンド交通や移動販売車の導入等を支援しているところです。
 こうした中、お示しのように、ドローン等のデジタル技術の活用は、これまで対応が困難であった地域課題を、従来にはない手法で解決するだけでなく、生活の質を飛躍的に向上させる可能性を有しています。
 また、特に医療環境の厳しい過疎地域や離島においては、感染症の拡大を防止し、コロナの時代の「新たな日常」を創っていく観点からも、対応が求められる課題と考えています。
 このため、県としては、中山間地域でもデジタル技術の効用が十分発揮されるよう、その基盤となる光ファイバの整備を市町に強く働きかけるとともに、具体的な取組としても、5Gを活用したへき地医療機関に対する遠隔サポートの実証事業等を進めています。
 また、ドローンを活用した物流ビジネスや自動運転サービスなどの実証実験に取り組む地域も県内に現れてきており、こうした意欲ある取組を積極的に支援し、早期の社会実装と他地域への横展開を図っていきたいと考えています。
 その一方で、中山間地域の中には、地域づくり活動の担い手不足や高齢化等から、現状においては、デジタル技術による新たなサービスの導入に消極的と見込まれる地域も少なくありません。
 このため、ICTを地域に根づかせ、生活の質の向上につなげていくための新たな事業にも取り組むこととし、この度の補正予算に計上したところです。
 具体的には、中山間地域にICT技術の専門家を派遣し、オンラインによる生活サービスの利用等について、住民ニーズに即したアドバイスを行い、地域におけるデジタル化の普及・定着を図っていくこととしています。
 県としては、今後も市町や地域と連携し、意欲ある取組を支援しながら、デジタル技術を活用した中山間地域の振興に積極的に取り組んでまいります。

2 農山村が有する多面的機能について

 農地やその関連施設が有する雨水や地下水の涵養・貯留機能、森林が有する水源涵養機能は、災害防止や生態系の維持に直結しており、一度その機能を失ってしまうと、元に戻すことは、非常に難しいと言われている。
 農山村が果たしている治水などの多面的機能を改めて評価しなければならないと考えている。
 本県では、森林においては、「やまぐち森林づくり県民税」や「森林環境譲与税」を活用した取り組み、農地においては、「多面的機能支払交付金制度」や「中山間地域等直接支払制度」による地域ぐるみの取り組みが展開されており、森林や農地の保全に大きく寄与している。
 一方で、農林業従事者の高齢化が進み、森林や農地、農業水利施設などの関連施設の維持・管理が難しくなっている実態がある。
 農山村は食糧生産の場というだけではなく、災害防止に大きく寄与していることを県民に広く周知していくことが、農山村で暮らし、森林や農地を守っている農林業者の意欲向上につながっていくのではないかと考える。
 そこで、本県の農山村が引き続き、治水などの多面的機能を発揮することができるよう、今後、森林と農地の保全をどのように進めていくのか、また、農山村の機能を県民に広く周知するため、どのように取り組んでいくのか、所見を伺う。

答弁 部長
 次に、農山村が有する多面的機能についてのお尋ねにお答えします。
 農山村における農地や森林は、農林業の生産活動を通じて、県土の保全、水源のかん養などの多面的機能を有しており、今後とも、その機能を適切に維持・発揮させることが重要です。
 県では、これまで、中山間地域等直接支払制度などを活用し、農地や農業水利施設の保全管理活動への支援を行うとともに、「やまぐち森林づくり県民税」による荒廃森林の整備などを進めてきたところです。
 一方、農山村においては、農林業従事者の高齢化が進み、農地や森林の維持・管理が困難となるなど、農林業を取り巻く環境は、依然として厳しい状況にあります。
 このため、元気な農林業・農山村の実現に向け、多面的機能の維持・発揮や、地域のニーズに的確に応える生産基盤の整備に、一層取り組んでまいります。
 具体的には、中山間地域等直接支払制度などにより、隣接集落が連携した活動体制づくりや、管理省力化機械の導入など、地域の保全活動を支援するとともに、農地の管理が容易となる用排水路等の整備を推進します。
 また、人工林の多くが利用期を迎える中、主伐と再造林による森林資源の循環を着実に進めるとともに、森林環境譲与税を活用した取組を促進するなど、森林の適切な管理に努めてまいります。
さらに、農山村の機能を県民に広く周知するため、農林業体験活動の開催や、ホームページなどによる地域活動等の情報発信により、交流人口や関係人口の創出・拡大に努め、農林業者の意欲向上に繋げていきます。
 県としては、引き続き、農山村の多面的機能の維持・発揮に向けた取組を積極的に推進してまいります。

3 新型コロナウイルス感染症対策について
(1)これまでのコロナ対策を踏まえた今後の医療体制の確保について

 新型コロナウイルスは見たこともない感染症であり、最悪の事態を想定し、厳格な対応と、最優先で病床や医療資源を振り向けることは、初動対応として理解できるが、感染者の8割は軽症・無症状のまま治癒し、高齢者かつ持病のある方が重症化の危険性が高いことが分かってきている。
 この傾向のまま感染者が増え続ければ、軽症者が病床を埋め、重症者やコロナ以外の患者の入院に支障をきたす。
 また、通常の診療においては、感染を恐れた受診控えが、現実の問題として明らかになっており、県民の健康へのリスクが高まっている。
 このため、現在までのコロナ対策の取組を踏まえ、今後の新型コロナのリスクに応じた適正な対策につなげるなど、真に医療を必要とする人々にしわ寄せが生じることのないようにする必要がある。
 県として、これまでのコロナ対策の取組を踏まえ、感染症対策とそれ以外の疾患の患者に対する医療を両立させ、コロナ時代にふさわしい医療体制の確保に繋げていく必要があると考えるが、御所見を伺う。

答弁 部長
 これまでのコロナ対策を踏まえた今後の医療体制の確保についてのお尋ねにお答えします。
 新型コロナウイルスの感染が拡がる中、県民の安心・安全を確保するためには、適切な医療を提供できる体制づくりが重要です。
 このため、県では、これまでに、県医師会や医療機関の御協力のもと、423床の入院病床の確保に加え、軽症患者や無症状の方を受け入れるため、宿泊療養施設834室を確保し、合わせて1,257名の受入体制を整備したところです。
 こうした中、新型コロナウイルス感染症の長期化が予想されていることから、県としては、他の疾患等の医療との両立を図るための効率的な病床運用や、重症患者等に対応できる医療提供体制の確保に取り組むこととしています。
 具体的には、まず、効率的な病床運用については、本年7月に、国が示した患者推計を踏まえた病床確保計画を策定し、感染状況に応じた4つのフェーズごとに必要となる受入病床の確保や調整を行うこととしています。
 また、重症患者等への適切な治療ができるよう、山口大学医学部附属病院や4つの感染症指定医療機関を重点医療機関に指定するとともに、広域的に感染症患者を受け入れる病床を常時確保するなど、医療提供体制の整備に努めてまいります。
 なお、現在、国において、軽症や無症状者の入院措置等のあり方について、政令の見直しも含めた検討が進められていることから、その動向を踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えています。
 こうした取組に加え、お示しのように、感染を恐れた受診控えも懸念されることから、今後、TVスポット等を通じて、適正な受診を広く県民に呼びかけてまいります。
 県としては、今後とも、関係機関と連携し、医療提供体制の充実を図り、新型コロナウイルス感染症対策に積極的に取り組んでまいります。


(2)感染防止対策と社会経済活動の両立に向けた取り組みについて

 イベント開催制限の緩和について、国の分科会は、5千人の上限の解除や、声援などが想定されないクラシックコンサートなどは収容率を100%までとすることなどを提言された。また、9月10日、東京都は都民の都外への移動自粛を解除するとともに、飲食店への営業時間短縮要請を今月15日で終了すると発表した。これを受け、国は10月1日から東京都をGoToトラベルキャンペーンの対象地域とした。
 このように、「ウイズコロナ」時代の全国的な動きは、ギアを1段上げて、新しいステージを迎えようとしており、本県においても、感染防止対策と社会経済活動の両立に向けて、更なる取り組みをお願いしたい。
 私の地元でも、大きく落ち込んだ経済に苦しんでおられる多くの方から、様々なご相談を伺っている。県民の安心・安全は最優先であることは間違いないが、それを理由にコロナ対策が過度なものとなるようなことがあってはならない。
 コロナ対応に対する評価は、感染拡大をいかに防いだかということだけではなく、経済をどれだけ守ったか、県民生活の犠牲をどれだけ抑えられたか、感染防止と社会経済活動の両立をいかに図ることができたかということも含めて評価されなければならないと考える。そこでお尋ねする。
 新型コロナウイルス感染症と落ち込む社会経済活動の両方から県民を守るため、感染防止対策と社会経済活動の両立にどのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺う。

答弁 部長
 新型コロナウイルス感染症対策についてのお尋ねのうち、感染防止対策と社会経済活動の両立に向けた取り組みについてお答えします。
 新型コロナウイルス感染症から県民の命と生活を守るためには、お示しのとおり、感染防止対策と社会経済活動の両立を図っていくことが重要です。
 このため、県としては、これまで、県民や事業者等に対し、「新しい生活様式」の実践や、業種ごとの「感染拡大予防ガイドライン」の徹底を促すとともに、落ち込んだ県内経済の回復のため、消費需要の喚起等に取り組んできたところです。
 しかしながら、感染症の収束が見通せない状況にあっては、人々の行動も慎重にならざるを得ず、社会経済活動の回復に向けて、依然として厳しい状況が続いています。
 このため、このたびの9月補正予算においては、感染防止対策を十分に講じながら、県内活動の回復のための更なる需要喚起等に取り組むこととしたところです。
 具体的には、秋の観光シーズンにおける県内への誘客を促進するため、体験型コンテンツの割引を実施し、観光需要を一層喚起することとしています。
 また、県産農林水産物の更なる需要回復や拡大を図るため、これまでの和牛や地鶏、日本酒、花き等に、新たに高級魚を加えた、「もっとみんなでたべちゃろ!キャンペーン」を展開していきます。
 さらに、これら全県的な取組に加え、地域の飲食店などの需要喚起に向けては、新たな交付金制度を設け、市町の主体的な取組を支援することとしたところです。
 引き続き、国が示した感染状況に関する指標をモニタリングしつつ、今後は、国の「GoToトラベル」や「GoToイート」などの需要喚起対策との相乗効果も発揮させながら、こうした取組を進め、県民生活の安定確保を図るとともに、社会経済活動を段階的に引き上げていくこととしています。
 県としては、県民の命と生活を守ることが最重要課題との認識の下、新型コロナウイルス感染症との共存を前提に、引き続き、国や市町と連携し、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた取組を推進してまいります。

4 新たな時代の人づくりについて

 変化の激しい時代を迎える中、人口減少・少子高齢化が急速に進む地方だからこそ、地域の活力を創り出し、将来を担っていく「人づくり」が重要な課題であることは論を待たない。本県では、こうした課題認識の下、今後、県として目指すべき人づくりの姿を示す「新たな時代の人づくり推進方針」の策定を進め、先日、素案が公表された。
 昨年度、我が会派から指摘した人づくりにおける幼少期の重要性、特別な支援が必要となる子どもへの配慮、私学との連携といった視点についても、しっかりと盛り込まれている。すべての子どもや若者の学びへの意欲を受け止めながら、県全体として新たな時代に向けた人づくりを進めていくという強い思いが伝わる指針となっており、今後の取組に大いに期待する。
 未来を自分たちの手で創っていこうとする精神や志、新たな知識や技術を身に付けようとする姿勢は、歴史や伝統に裏打ちされた本県の財産である。この財産を将来世代に引き継いでいけるよう、子どもや若者の挑戦を応援する取組や環境整備を進めていくことが重要だと考える。
 本県の未来を託す子どもや若者が、変化の激しい時代を力強く生き抜くため、新たな時代の人づくりを今後どのように進めようとしているのか、所見を伺う。

答弁 知事
 国本議員の御質問のうち、私からは、新たな時代の人づくりについてのお尋ねにお答えします。
 本県においては、人口減少や少子化が依然として進行し、若者の県外流出が続いています。また、Society5.0社会の到来やグローバル化の進展等の中で、国際間・地域間の競争もますます激しさを増しています。
 さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、我々は今、これまでの慣例や価値観を見直し、デジタル化等の社会変革を進め、コロナの時代の「新たな日常」を創り上げていくことを求められています。
 まさに激動の時代にあって、県政が目指す「活力みなぎる山口県」を実現していくためには、本県の将来を担い、未来を切り拓いていく人材の育成が、これまでにも増して重要であると考えています。
 私は、そうした多くの人材の育成を目指し、昨年県議会からいただいた御指摘を踏まえて、学びへの意欲を持つ子どもや若者にあまねく必要な教育を提供するとともに、「志」を育て、実現に向けた行動を支援するための取組をさらに加速してまいります。
 その具体化に当たっては、この度取りまとめた「新たな時代の人づくり推進方針」の素案において、6つの取組の視点を掲げました。
 第1は「生涯にわたる人づくりの基礎を培う」であり、幼児教育・保育の充実を図る中で、幼少期における子どもの豊かな心の育成を進め、生きる力の基礎を培い、その後の教育にしっかりとつなげてまいります。
 第2は「ふるさと山口への誇りと愛着を高める」であり、本県を舞台に活躍する若者を育てるため、先人たちの「志」や「行動力」にも学びながら、変化の激しい時代であればこそ、自らの価値観の基礎となる「山口県人としてのアイデンティティ」の確立を一層促していきたいと考えています。
 そして、第3の「新たな価値を創造する力を育む」において、お示しの地域と連携した取組や創造的な体験活動等を通じ、地域や社会が抱える課題を自ら発見し、他者と協働して解決する力や、グローバルな視野、さらに、AI等の新しい技術を活用する力の育成に取り組んでまいります。
 第4は「誰にも等しくチャレンジの機会を創る」であり、特別支援学校における専門的な教育や、家庭環境等に困難を有する子どもへのきめ細かな支援を充実するとともに、再チャレンジを希望する若者に対し、多様な「学び直し」の機会を提供していきたいと考えています。
 第5は「地域や時代のニーズに対応し、チャレンジのための環境を整える」であり、公立学校と私立学校の連携を図りながら、特色ある教育や学力向上に向けた環境づくりを進めます。また、ICTを活かした教育の推進やコミュニティ・スクールの深化、県内高等教育機関における機能分担と連携などにも積極的に取り組んでまいります。
 最後に、第6の「新たな人づくりの推進体制を築く」では、幼稚園教諭・保育士等の確保・育成や、教職員の資質能力の向上、新たな学びの視点を取り入れた教育プログラムの開発等を推進していくこととしています。
 私は、これらの視点に基づいて、全体を体系的かつ中長期的な視点から俯瞰しながら、相互のつながりと実効性のある施策を構築し、市町や学校、地域、企業等と一体となって、本県の新たな時代を担う人づくりに全力で取り組んでまいります。

1 農業農村整備事業の推進による農業振興について
(1)基盤整備後の生産振興について

 農業の活性化のためには、若者たちに夢と希望を持ってもらうことが重要であり、農業の基盤整備はその基本である。
 基盤整備を契機として、「アグリ南すおう」など広域的な農業経営を行う組織が誕生し、1経営体の面積は飛躍的に増加しており、将来につながる農業のあり方が示されている。
 スマート農業技術やこれに対応する農業機械の導入が可能になったことも基盤整備が進んだことと大きく関係しており、基盤整備の重要性がますます高まっている。
 国は「新たな土地改良長期計画」を策定し、豊かで競争力のある農業の推進という産業政策など3つの視点を示され、私もこの視点で土地改良事業を進めることが本県の農業振興につながると確信する。
 国予算が増加する中、本県においても、ほ場整備や農地の汎用化対策などが進められてきたことを大変心強く感じる。
 しかしながら、担い手の減少や高齢化も相まって、本県の農業産出額は横ばい傾向にあり、産業政策の視点からは課題が多く、ソフト面の早急な取組が必要である。
 これまで、県として取り組まれた土地改良事業の効果を最大限生かすため、産業政策の視点から、担い手育成や生産振興にどのように取り組んでいくのか伺う。

答弁 知事
 国本議員の御質問にお答えします。
 まず、基盤整備後の生産振興についてです。
 本県農業を活性化し、若者たちにとって魅力ある農業を実現するためには、その基本となる生産基盤の整備を推進するとともに、整備された農地を積極的に活用し、担い手を中心に効率的な農業経営を展開していくことが重要と考えています。
 このため、関係団体等と連携し、農地の大区画化や、畑作物の生産も可能となる水田の汎用化を進めるとともに、基盤整備に向けた話し合いを契機とした集落営農法人の育成に取り組んできたところであり、経営の基幹品目として麦や大豆等の導入が進むなど、農地の有効活用が図られています。
 こうした中、担い手の減少や競争の激化など、取り巻く環境は厳しさを増していることから、私は、本県農業の競争力を高めていけるよう、集落営農法人の経営基盤の強化や、整備後の農地を最大限活用した、需要の高い品目の生産拡大、生産性の向上など生産振興に取り組んでいく考えです。
 具体的には、集落営農法人の経営基盤を強化するため、農地中間管理機構と連携し、農地の集積による経営規模の拡大を促進するとともに、多様な人材を活用できる加工や直売の取組など、経営の多角化を積極的に支援します。
 加えて、お示しのアグリ南すおうなど、複数の法人が連携する集落営農法人連合体の形成を進め、新たな取組として、ドローンによる広域での作業受託や大規模な施設園芸の導入など、若者の雇用に繋がる事業展開を促進しているところであり、こうした取組を速やかに県内各地に波及させていきます。
 生産振興に向けては、需要の高い品目の生産を拡大するため、酒造会社や量販店等のニーズをしっかりと把握した上で、酒米や加工用野菜等の計画的な生産を推進するとともに、地域の特性を活かしたリンドウなど、新たな作物の導入を促進し、汎用化された水田のフル活用を進めます。
 また、生産性の向上を図るため、大規模な農地を少人数で管理できる自動走行トラクターなどスマート農機の導入を促進するとともに、こうした機械を駆使できる人材の育成や先端技術の修得などを進めるため、農林業の知と技の拠点の整備にも着実に取り組んでいきます。
 私は、市町や関係団体等と緊密に連携し、次代を担う若者が夢と希望を持てるよう、基盤整備の効果を最大限発揮した農業の振興に全力で取り組んでまいります。

1 農業農村整備事業の推進による農業振興について
(2)ほ場整備と連携した道路整備について

 ほ場は、農業従事者の高齢化等が進行している農業・農村を維持するため、農業経営の改善や地域農業の振興等に寄与する重要な基盤であり、その整備の重要性は高まっている。
 一方、道路は、通勤や通学等、日常生活の利便性の向上だけでなく、各種振興計画の展開や経済・産業の活性化、交流人口の拡大、安全・安心の確保等を図るための重要な基盤であり、その整備の推進も喫緊の課題である。
 中山間地域が将来にわたり発展していくため、農業基盤と道路整備をバランスよく計画的に進めていく必要がある。
 現在も、国営ほ場整備事業「南周防地区」の整備と併せて、県道光柳井線の麻(お)郷(ごう)奥(おく)地区や県道光上関線の瀬戸地区では、バイパス計画等により整備が進められている。
 県は、道路用地として転用した農地を放置せず、一日も早く、事業目的を達成されるよう努力して頂きたいと強く思う。
 そこで、県として、活力ある地域を創るため、地域の産業力等の強化、交流基盤の創造、地域の再生とひとづくり、安心や安全の確保等に不可欠な、これらの道路の早期整備に向けて、今後、どのように取り組むのか、所見を伺う。

答弁 部長
 ほ場整備と連携した道路整備に関するお尋ねにお答えします。
 県では、「やまぐち未来開拓ロードプラン」に、「産業・地域を支える」、「人々のいのちを守る」等の方針を掲げ、暮らしやすいまちづくりの支援や、安心・安全な交通環境の確保を図るため、選択と集中の視点に立ち、重点的・計画的に道路ネットワークの整備を進めています。
 お示しのとおり、ほ場は、農業経営の改善や地域農業の振興等に寄与する重要な基盤であり、また道路も、日常生活の利便性向上や、産業の活性化等を図る上で重要な基盤であることから、県としては、ほ場と道路の整備を連携して進めていくことは、円滑な事業実施に有効であると認識しています。
 このため、ほ場整備が計画されている区域内に未整備の道路がある場合は、当該道路の整備の必要性・緊急性を勘案したうえで、ほ場整備と連携して道路整備を進めています。
 このうち、県道光柳井線の麻(お)郷(ごう)奥(おく)地区では、詳細設計を終えたところであり、現在、用地取得に必要な測量等を実施しています。
 また、県道光上関線の瀬戸地区では、用地の取得が概ね完了しており、早期整備に向け、事業調整や工事を実施しているところです。
 引き続き、ほ場整備と連携した道路整備に当たっては、関係機関と十分に調整を行い、早期整備に努めてまいります。

2 県産農林水産物等の輸出促進について

 国内の人口が減少に転じ、県産農林水産物等のマーケットとして拡大が期待できず、また、食のグローバル化が劇的に進んでいる中において、生産者の所得を確保・向上していくためには、海外輸出に積極的に取り組んでいくことが不可欠と考えている。
 政府が輸出先国の輸入規制へ対応するための窓口を一本化した司令塔組織を設置することは、本県農林水産物等の輸出拡大に向けた追い風になるものと考えており、国の動きに遅れることなく、さらにスピード感を持って輸出拡大を図っておくことが重要と考えている。
 そこで、県産農林水産物等のさらなる輸出拡大に向け、今後どのように取り組んでいかれるのか、所見を伺う。

答弁 部長
 県産農林水産物等の輸出促進についてのお尋ねにお答えします。
 人口減少により国内市場の縮小が見込まれる中、県産農林水産物等の需要を確保し、生産者の所得向上に繋げるためには、海外における新たな販路の開拓が重要であり、重点地域の東アジアはもとより、経済発展が著しいアセアン地域においても、関係者一体となった取組を展開してきたところです。
この結果、輸入商社等国内外の関係者とのネットワークづくりが進み、国や地域ごとに輸出ルートが構築されるとともに、県内の生産者や食品事業者等の輸出への関心も高まってきています。
こうした中、国においては相手国の輸入規制への対応窓口を一本化し、政府間交渉のための迅速な情報収集・分析を行うなど、今後、輸出拡大に向けた戦略的な取組が加速されることから、県としても、これまでの成果を活かし、輸出への取組を一層強化することが必要と考えています。
このため、これまで築いてきた輸出ルートを最大限活用し、さらなる販路の拡大を進めるとともに、輸出コストの削減による県産品の競争力の強化を図るほか、新たに輸出にチャレンジする事業者を掘り起こし、輸出の取組の裾野を広げていくこととしています。
まず、販路の拡大に向け、現地の輸入商社等と連携し、商談が成立した商品について、取扱いが継続・拡大できるよう現地のイベント等に併せて販促活動を行うとともに、これまで築いたネットワークを活用し、百貨店等に加え、業務用などの大口取引先の開拓にも取り組んでまいります。
また、県産品の競争力の強化に向け、輸出に先駆的に取り組んできた県内事業者を「山口県版エクスポーター」として位置づけ、複数事業者の商品を下関港など近隣の物流拠点から輸出を行う取組を支援することにより、新たな低コスト輸出体系を構築していきます。
さらに、輸出の取組の裾野を広げるため、県内で実施する商談会を活用し、意欲ある事業者を新たに掘り起こすとともに、輸出の実現に向け、ジェトロ等と連携し、相手国の嗜好や輸出手続き等のアドバイスを行った上で、現地の評価を確認するテスト輸出等を支援します。
県としては、市町や関係機関等と緊密に連携し、これまで築いてきた国内外のネットワークを最大限に活用しながら、県産農林水産物等の輸出促進に向けた取組を加速化してまいります。

3 関係人口拡大による中山間地域の活力創出について

 中山間地域では、地域づくりを支える担い手の育成・確保が大きな課題であり、移住者や地域外人材等も含め、地域内外の担い手を広く繋ぎ止め、活用することが重要である。
 「定住人口」でも「交流人口」でもなく、定期的に行き来するとか、地域や地域の人々と多様に関わるいわゆる「関係人口」の拡大を進めていくことが重要である。
 国でも、第2期総合戦略における新たな視点として「地方移住にもつながる関係人口の創出・拡大」が示されている。
 平生町佐合島では、住民が、島出身者や過去に島を訪問された方々と関係を深めようと地道に活動を続けており、こうした取組を支援していくことが必要である。
 県では、中山間地域において、住み慣れた場所で安心して暮らしていける持続可能な地域づくりに向けて、関係人口の拡大による地域の活力創出に、今後どのように取り組まれていくのか、所見を伺う。

答弁 知事
 次に、関係人口拡大による中山間地域の活力創出についてのお尋ねにお答えします。
 中山間地域では、急速な人口減少や高齢化の進行により、地域の担い手不足が深刻化する中、域外から多様な人々を呼び込み、幅広い人材等の力を活かし、地域の活性化を図っていくことがますます重要になってきていると考えています。
 私は、行政・関係団体等と一体となって、移住・定住対策に取り組んできたところでありまして、移住相談件数は年々増加し、昨年度は、中国地方でトップの約8,700件に達するなど、本県への移住の関心が高まるとともに、多様な形で地域に関わりたいとのニーズが増大しています。
 さらに今後は、都市住民が多様な形で地域に継続的に関わることのできる機会を増やしていくことで、地域活性化や将来的な移住に向けた裾野拡大等につなげていくことが必要と考えています。
 国においても、こうした関係人口の創出・拡大が、第2期総合戦略の策定に向けた基本方針における地方創生の新たな視点として示されたところであり、県の第2期総合戦略の策定においては、関係人口の創出・拡大に向けた方策をしっかりと盛り込んでまいります。
 具体的には、地域の出身者や過去の来訪者との関わりを深めようとする地域活動への支援や、地方に関心を持つ都市住民が地域の課題解決等に、より深く参画することにつながる新たな仕組みの構築などを検討していきます。
 私は、地域や市町、関係団体と連携しながら、関係人口を拡大し、新たな活力を創出することにより、住民がいつまでも安心して暮らし続けられる持続可能な中山間地域を創っていけるよう、全力で取り組んでまいります。
 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

4 障害者雇用の促進について

 県の障害者法定雇用率達成企業は55.9%と、全国でも比較的上位にあるものの、未達成企業は依然として約4割存在している。
 障害者雇用には、私の地元でも、障害者の作業遂行能力や仕事に対する意欲などに関する不安、作業補助や介助に要する人員の確保といった経営上の懸念など、率直な声が寄せられている。
 法定雇用率達成企業の割合は、引上げ前の年と比べ減少しており、雇用する側の息切れ感がうかがえる。
 障害者が職業的な自立を果たし、いきいきと生活していくためには、事業主の思いや経営上の事情にも耳を傾けた上で、理解促進・意識改革に丁寧に取り組むことが欠かせない。
 今後、法定雇用率の更なる引上げを追い風として、着実に障害者の雇用促進につなげるためには、事業主に対し、よりきめ細かで丁寧な啓発活動が求められる。
 県は、法定雇用率未達成企業の現状と実態、達成できない事情をどのように把握・評価し、今後、その理解促進・意識改革にどのように取り組むのか、所見を伺う。

答弁 部長
 障害者雇用の促進についてのお尋ねにお答えします。
 障害者の雇用状況につきましては、企業が国に直接報告し、国はその結果を公表することとされており、お示しのとおり、県内企業の約4割が法定雇用率未達成となっております。
 国は、未達成企業の名称やその実態について公表していないため、県は、個々の事情を把握できる立場にはありませんが、国が行ったアンケート調査では、「会社内に適当な仕事がない」、「障害者を雇用するイメージやノウハウがない」などの課題が挙げられています。
 県内企業が抱える事情も同様と思われることから、県では、課題の解決に向けて、国との役割分担の下、障害者雇用に対する企業の理解促進と意識改革を進めるため、普及啓発に取り組んでいます。
 具体的には、障害者に対する必要な配慮や、相談支援機関、助成金制度などを紹介する本県独自のガイドブックを作成して、ハローワークなどを通じ、企業に広く配布するなど、理解促進に努めています。
 また、企業の人事担当者等を対象に「職場リーダー講座」を開催し、雇用の進め方、社内体制の整備等に関する研修を実施するとともに、優良事業所や特別支援学校を訪問し、障害者が活躍する現場の見学を実施しています。
 こうした取組の結果、障害者の新規雇用が実現するとともに、特別支援学校の職場実習や職業訓練を新たに受け入れることが決定するなど、企業の意識改革が進んでいます。
 県としては、今後とも、労働局等関係機関と緊密に連携し、障害者雇用の促進に向けて、丁寧な啓発活動に積極的に取り組んでまいります。

5 洪水対策について

 全国各地では、河川の氾濫、堤防の決壊等が発生するなど、毎年のように大きな被害を受けている。
 山口県においても、昨年の7月豪雨等、大きな被害をもたらした災害が発生しており、これらを未然に防止する治水対策が急務であると考える。
 私は、田布施川や灸川の流域を洪水による浸水被害から、住民の生命・財産や、それらを取り巻く生活環境を守るため、河川改修の加速化や早期完成が必要だと考える。
 また、こうした河川改修と併せて、土砂の撤去や護岸の補修など、適切な維持・管理も重要である。
 特に、草木の伐採については、これまで、地元の皆様がボランティアで実施されてきたが、高齢化等により、実施困難となっており、今後は、県が実施せざるを得ないと考える。
 さらに、ハザードマップにより浸水想定区域を住民に周知徹底するなどのソフト対策も充実し、総合的な洪水対策を講じていくことが重要であると考える。
 県として、県民の生活を災害から守るため、安心・安全の確保や災害に強い県づくりに不可欠である、河川整備をはじめとした洪水対策について、今後、どのように取り組まれるか、所見を伺う。

答弁 部長
 次に、洪水対策についてのお尋ねにお答えします。
 昨年の7月豪雨など、近年、気候変動に起因する記録的な
 集中豪雨等による災害が頻発化・激甚化しており、こうした災害から県民の生命・財産を守るためには、河川整備などの洪水対策が極めて重要であると考えています。
 このため、県では、これまでも、比較的発生頻度の高い洪水に対しては、堤防の整備などのハード対策を進め、また、施設の能力を上回る洪水に対しては、住民の避難に資する情報の提供を柱としたソフト対策を進めているところです。
 まず、ハード対策としては、河川整備計画に基づき、中長期的な視点で計画的に実施する河川改修などを着実に進めるとともに、3か年緊急対策の予算も活用し、短期的に効果を発現する河川内の土砂掘削などの対策を集中的に実施することにより、引き続き、可能な限り浸水被害の軽減を図ってまいります。
また、こうした河川改修に併せて、治水上支障のある箇所等の浚渫や施設の補修等 を効果的、効率的に実施することで、河川の適切な維持管理に努めるとともに、草木の伐採については、地域住民の草刈作業に併せて、県は刈草の収集運搬を行うなど、住民を支援する取組も進めています。
 次に、ソフト対策としては、想定し得る最大規模の洪水を対象とした浸水想定区域図の整備に加え、今年度から、防災行動とその実施主体を時系列で整理した「水害対応タイムライン」の試行運用を始めたところであり、こうした取組により、住民への的確な情報伝達や避難行動につなげていく考えです。
 県としては、県民の安心・安全の確保のため、総合的な治水対策の推進に取り組んでまいります。